ゴルフ場におけるメンバーシップとはどのようなものなのか?これからの新時代のゴルフ場経営にとってどのような影響を及ぼしていくのか?経営側の視点とメンバーの視点から考えてみたいと思います。
ゴルフ場の運営スタイルはメンバーの地位や権利の強さに応じて『メンバーシップコース』『パブリックコース』の2つに大きく分ける事ができます。
目次
『メンバーシップコース』について
預託金(無利子の返還義務のある預け金)と入会手数料(事務手続き料)を合わせた金額の「会員権」をゴルフ場が発行してそれを資金にゴルフ場を開発して運営を行っているコースの事をいいます。
いわゆる「会員制」と呼ばれるコースで、新規ゴルフコースが開場しまくっていた時代に、多く誕生したスタイルのゴルフ場です。
会員権を購入したメンバーは「プレーする際の優先権」と「ビジターより安いプレー代」という特典を受け、更に「オフィシャルハンディキャップを取得」してクラブ内の各公式競技に参加できる資格を有します。
また、最盛期には市場にてゴルフ会員権が活発に売買されていたため、「投機目的」として会員権を売買する人もいました。
投機目的でゴルフ会員権を購入した人の中にはバブルの前後で儲かった人、損をした人に分かれる事になったのは周知のとおりです。
更にメンバーシップコースの中にはメンバーのみもしくはメンバー同伴しかプレーできないという「完全会員制」のコースとメンバーとは関係のないビジターでもプレーできる「会員制」のコースとにわかれています。
「完全会員制のコース」は俗に「名門コース」とよばれ、厳格な入会条件やドレスコード、エチケットが必要とされています。
日本国内では「名門コース」は少なくなっており、ほとんどのコースがメンバーとビジターとがプレーできる「会員制コース」がほとんどです。
『パブリックコース』について
こちらもメンバーが一人もいない「完全パブリックコース」とメンバーとビジターが混在するが、そのプレー条件に差がなく平等に扱われる「パブリックコース」との2つに分ける事ができます。
メンバーコースとは違い、最小限のドレスコードやエチケット(他人に不快な思いをさせない程度)を要求され、敷居が低いのが特徴です。
ゴルフ場のメンバー数に応じて多い方から
「完全会員制」➡「会員制」➡「パブリック」➡「完全パブリック」
と区分けする事が出来ます。
『運営』と『経営』との違いについて
会員制のゴルフ場にはコースや施設を利用してゴルフの普及、発展に努め、会員並びにその家族の親睦、体位の向上、健康の増進を図ることを目的とした社交組織が存在します。
これを俗に「クラブ」と呼ぶのですが、そのクラブには会としての規則いわゆる「会則」というものがあります。
その会則にのっとって会員の中から役員を決めて様々な委員会を組織しています。
役員には「理事長」「副理事長」「理事」「各分科委員会の委員長」「各分科委員会の委員」、クラブによっては「キャプテン」という理事長と副理事長との間にいるような方もいます。
そして、理事たちで構成される「理事会」、各分科委員たちで構成される「委員会」というコミュニティが存在します。
ここで注目するべきは、会則の中に
「理事会は、クラブ運営上の最高意思決定機関とし、その議決事項は会社の承認を得て実施する」
と
「クラブは~中略~社交組織であり、ゴルフ場の経営管理、維持及び運営並びにこれらに付随するクラブの管理事務は、すべて株式会社★★が行うものとする」
と記載されている点です。
ここから読み取れることは、
『運営は理事会、経営は会社が行う』
という認識です。
そこで、「運営」と「経営」について考えてみましょう。
「運営とは」
団体などの機能を発揮できるように、組織をまとめて動かしていく事。
「経営とは」
事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行する事
とあります。
この二つの違いはなんでしょうか?
調べてみると、双方とも組織を円滑にするという意味では手段は同じなのですが、経営は営利を目的とし、運営は組織を円滑にする事自体を目的とするという点が決定的に違うという事です。
『合理性の不一致』
ゴルフ場におけるクラブ運営という点にフォーカスすると、
メンバーのクラブ運営の目的は快適にクラブライフをエンジョイしたいという事になり、それが満たされる事が一番合理的であると判断します。
一方の会社側は営利を目的としているので、
永続的に会社経営をしていくためには業界環境の変化に対応したシンプルサービス化を推進してコストを削減して、利益を上げるという手段が最も合理的であると判断します。
本来ならば、双方の合理性は一致していいはずです。
会社側はメンバーの意見を反映させた取り組みをすることで、サービスレベルを高め、商品価値を高め、価格を上昇させるための参考にすればいいのです。
ですが、今は資金を投下するにも短期の戦略的な思想でとらえる傾向にあり、回収期間が長いものについては後回しにするような傾向になっています。
そしてもう一つ、シンプルサービス化(サービスの再定義)は新規ゴルファーにとっては受け入れやすいもの(初めて経験する事なので、そもそも問題意識がない)であるのに対して、ベテランゴルフファー、特にメンバーにとっては、これまで当たり前のようにやってもらっていたことを、やらなくなったり、これまでやっていなかったことをやるようにお願いされたりする事はとても承服できるものではありません。
そのような認識の差が生じするのは理解できるものであり、ここに双方の合理性に対する認識の不一致が生じるのです。
『リープフロッグ現象』
この言葉をご存じでしょうか?
リープフロッグとはビジネス領域において、新興国が先進国から遅れて新しい技術に追いつく際に、通常の段階的な進化を踏むことなく途中の段階をすべて飛び越えて一気に最先端の技術に到達してしまうことを言います。
例えば、中国や東南アジア、アフリカなどでは、電話回線や光ファイバーといった従来のインフラが整う前に小型衛星によるインターネットやスマートフォンが普及したため、モバイル向けサービスが急速に展開するという現象です。(シマウマ用語集より引用)
この現象にはもう一つ先進国の中にある既得権益という壁がある事も要因の一つです。
この話をゴルフ場に置き換えますと、メンバーシップの強いもしくはメンバー数の多いゴルフ場では、メンバーという既得権益者によって進化が遅れるということではないでしょうか?
これまでは業界の先端を走っていた会社も、これからの時代の波に乗り遅れるような事があれば、リープフロッグ現象によってその地位は揺るぐことになるのかもしれません。
『最後に』
このような会社とメンバー双方の溝を埋めるのはもはやAIを含むテクノロジーでしかないと考えています。
※参考記事 ゴルフ場のシンプルサービス化について~AIによるスマートオペレーションの可能性~、ゴルフ場と生産性向上について~スマートオペレーションと私たち人間の未来~
テクノロジーによって、人的サービスを無人化する事で、会社は省力化を図る事ができて、メンバーはホスピタリティの低下を抑制することが可能になります。
クラブを愛する気持ちは双方同じであり、共にこの変化に対応しながら発展していきたいものです。
それでは今日も素敵なゴルフライフを!
『参考:クラブ会則』
※あるゴルフ場のクラブ会則を以下に記載しています、参考にしてみてください。
〇〇クラブ 会則
第 1 章 総 則
(名 称)
- このクラブは、〇〇クラブ (以下「クラブ」という)と称する。
(目 的)
第2条 クラブは、株式会社●●(以下「会社」という)が所有経営し、株式会社★★が経営管理するゴルフ場およびその付帯施設(以下「ゴルフ場」という)を利用して、ゴルフの普及・発展につとめ、会員ならびにその家族の親睦、体位の向上、健康の増進を図ることを目的とする。
(経営管理)
第3条 クラブは前条の目的を達するための社交組織であり、ゴルフ場の経営管理、維持及び運営並びにこれらに付随するクラブの管理事務は、すべて株式会社★★が行うものとする。
(事務所)
第4条 クラブの事務所は、ゴルフ場クラブハウス内に置く。
第 2 章 会 員
(会員の種類)
第5条 クラブの会員は、次の通りとする。
(1)正会員
個人会員・・・記名者本人
法人会員・・・記名式により加入した法人
(2)週日会員・・・前号の個人会員、法人会員に同じ(従来の平日会員より呼称変更)
(3)平日会員・・・前号の個人会員、法人会員に同じ
(正会員)
第6条 正会員は、会社が別に定めた休場日及び特定日を除く全ての営業日に第9条
記載の会員の権利を有する。
(週日会員)
第7条 週日会員は、会社が別に定めた休場日、特定日、日曜日、および祝日(振替 休日を含む)を除く営業日に第9条記載の会員の権利を有する。
(平日会員)
第8条 平日会員は、会社が別に定めた休場日、特定日、日曜日、祝日(振替休日を含む)および土曜日を除く営業日に第9条記載の会員の権利を有する。
(会員の権利)
第9条 会員は、次の権利を有する。
(1)会社が別に定める料金で優先的にゴルフ場を利用すること
(2)ゴルフ場において行われる諸催しに優先的に参加することができること
(3)ビジターの入場紹介をすることができること
(入 会)
第10条
1 会員として入会しようとする者は、会則ならびに別に定める諸規則を承認のうえ所定の入会手続を行い、別に定める入会資格条件により理事会の審査承認を得たうえ、会社が別に定める入会金および会員資格保証金(以下「保証金」という)を会社に完納することにより会員資格を取得する。
2 会社は、入会金および保証金を完納した会員に対し会員証書(以下「証書」という)を交付する。
3 第1項の規定により納入された入会金は、返還しない。
(保証金の取扱い)
第11条 保証金は、会社が無利息で預かるものとする。
(年会費)
第12条
1 会員は、会社に対し理事会が承認した年会費を支払わなければならない。
2 年会費の充当期間は毎年1月1日から12月31日までとする。但し、会員が
期間途中に退会した場合(除名された場合も含む)といえども、その年度の年
会費支払い義務は免れず、会社は既に受領した年会費を返金しない。
3 会社は、毎年12月1日時点の会員に対し、原則として12月に翌事業年度の年会費を請求する。
4 当該事業年度に新たに入会した会員が入会に際して支払うべき年会費の額は
入会時点から12月31日までの期間を勘案して会社が別途定める。
5 年会費の納入方法は、会社が定める。
(届出、通知)
第13条
1 会員は、クラブおよび会社に対する届出事項に変更が生じたときは、速やかに会社所定の書式によりその旨届け出なければならない。
2 会員に対する通知は、会員の会社に対する届け出の所在地に対してこれをなし、会員が前項の届け出を怠ったため延着し、または到着しなかった場合、通知を発送した日から通常到達すべき期間を経たときに到達したこととする。
(会員数)
第14条
1 クラブの会員数は、理事会の承認を得て会社がこれを定める。
2 会社は、ゴルフ場の施設の改修、改善、補修等のため、その他クラブの運営
上必要に応じ、理事会の承認を得て、会員の募集を行うことができる。
(会員契約上の地位及び会員資格の譲渡)
第15条
1 会員は、会社が定め理事会が承認した手続きにより、会社との会員契約上の地位及びその会員資格を譲渡(相続を含む)することができる。
2 前項の会員契約上の地位及び会員資格の譲渡ならびに譲受に関する手続( 「名義書換」という)その他の事項については、別に定める。
3 入会の承認を受けた譲受人は、会社が別に定める名義書換料及び当該年度年会費を会社に納入し、名義書換手続きを完了した日をもって会員資格を取得したものとする。
4 会社は、理事会の承認を得て一定期間名義書換を停止することができる。
(会員資格の喪失)
第16条 会員は、次の各号のひとつに該当したときは、その会員資格を失う。但し、次の(3)号ないし(6)号の場合において、会社が定め理事会が承認した手続きにより、会社との会員契約上の地位を譲渡(相続を含む)するときには、会員資格は当該譲渡に伴い承継されるものとする。
(1)会員資格の譲渡
(2)退会または除名
(3)死亡または失踪宣告を受けたとき
(4)破産手続き開始決定を受けたとき
(5)法人会員の場合、当該法人の解散
(6)その他前各号に準じると認められるとき
(会員資格の停止または除名)
第17条 会員が次の各号のひとつに該当したときは、会社及び理事会は当該会員に対して会員資格を停止し、または除名することができる。但し、資格停止中も年会費の支払いを免れない。
(1)クラブの名誉を毀損または秩序、エチケットをみだす行為のあったとき
(2)年会費またはゴルフ場施設を利用する際のグリーンフィー及びその他の経費の支払いを怠り、催告を受けるもその後1ケ月以内に支払いのないとき
(3)暴力団その他の反社会的団体の構成員ならびにその関係者と認められる者を同伴または紹介したとき
(4)会社に対し不当な請求をするなどクラブの本旨に反する行為をして会社と係争関係にあるとき
(5)本規則およびクラブ諸規則に違反したとき
(会員契約の終了)
第18条
1 次の各号のひとつに定める事由が生じたとき、会員契約は終了する。
(1)会員が会社に対し退会の意思表示を行ったとき
(2)やむを得ない事情により、会社がゴルフ場施設を廃止したとき
2 会員に次の各号のひとつに定める事由が生じたとき、会社は理事会に報告の
うえ会員契約を解除することができる
(1)会員が年会費の支払いを怠り、その未払い額が3年分に達したとき
(2)会員に対する諸通知が継続して3年間到達しないとき
(3)第16条(3)ないし(6)号により会員が会員資格を喪失した後、1年間
入会手続(相続に伴うもの、会員契約上の地位の譲渡に伴うものを含む。)が
取られないとき
(4)会員契約の締結もしくはクラブへの入会申込みに際して虚偽の事実を申告しまたは不正な手段で入会したことが判明したとき
3 前2項により会員契約が終了したとき、会員契約上の地位を有する者は、 会員契約に定めるところに従い会社に対して保証金の返還を請求することができる。但し、会員契約の地位を有する者または会員契約上の地位を譲渡した者が会社に対して支払うべき債務を負担している場合、会社は返還するべき保証金の額からこれを控除することができる。
第 3 章 役 員
(役 員)
第19条 クラブに次の役員を置く。
理 事 長 1名
副理事長 若干名
理 事 若干名
2 理事長は、必要により名誉会長、名誉顧問その他の役員を理事会の承認を得て委嘱することができる。
(報酬、任期)
第20条 役員は、名誉職(無報酬)とし、その任期は、2ケ年とする。但し、再任・
兼任を妨げない。
2 役員は、任期満了後も後任者が就任するまでの間その職務を行う。
(理 事)
第21条 理事の選任は、次の通りとする。但し、理事の過半数は会員理事でなければならない。
(1)会員理事 若干名
会員理事は理事会が会員の中から選任する。
(2)会社理事 若干名
会社理事は会社が選任する。
2 理事に欠員が生じたときは、その補充をすることができる。なお、補充により選任された理事の任期は、前任者の残任期間とする。
(理事長、副理事長)
第22条 理事長および副理事長は、理事会において理事の中から互選する。
2 理事長はクラブを代表し、クラブ業務を統括する。
3 副理事長は理事長を補佐し、理事長が事故または欠けたときは、その職務
を代行する。
第 4 章 理事会および委員会
(理事会)
第23条 理事会は、理事長、副理事長および理事をもって構成し、理事長が必要に応じてこれを招集し、理事会構成員の過半数(委任状によるものを含む)の出席をもって成立する。
2 理事会の議長は、理事長とし、理事長が事故または欠けたときは副理事長または理事の一人がその職務を代行する。
3 理事会は、クラブ運営上の最高意思決定機関とし、その議決事項は会社の承認を得て実施する。
4 理事会の議決は、出席者の過半数で決し、可否同数の場合は、議長がこれを決する。但し、本会則及びこれに付随する細則、入退会規約等の諸規則の変更決議については、全理事の過半数をもって行う。
5 理事会はクラブの運営を円滑にするため、次の事項を議決する。
(1)本会則に規定する事項
(2)委員会の設置、廃止および委員の選任に関する事項
(3)クラブ会則ならびに諸規則の制定および改廃に関する事項
(4)ゴルフ場施設の運営に関して、会社に対する助言要望に関する事項
(5)その他クラブ運営に必要な事項
6 前項の議決事項は、本会則で特に会員への通知方法が定められている場合を
除き、ゴルフ場に掲示することにより、会員に告知する。
(議事録)
第24条 理事会の議事については議事録を作成するものとし、議長は、出席者のうちから議事録署名人2名を指名し、当該署名人は、議事録に記名・捺印するものとする。
(書面審議)
第25条 理事長は、審議事項が急を要し、理事会の招集が困難と認めた場合、当該議案を書面により理事会構成員に回付して議決することができる。
(委員会)
第26条 クラブの運営を円滑にするため、次の委員会を置く。
(1)競技委員会
(2)ハンディキャップ委員会
(3)総務委員会
(4)コース委員会
2 委員会は、会員の中から理事会の承認を得て理事長が委嘱した委員より構成し、理事長の委嘱する事項につきクラブ細則に従いその運営にあたるものとする。
3 委員長は、理事の中から理事会の承認を得て理事長が委嘱する。
4 副委員長は、2名以内とし会員の中から理事会の承認を得て理事長が委嘱する。
5 委員長、副委員長および委員の任期は、2ケ年とする。但し、再任・兼任を妨げない。
6 委員に欠員が生じたときは、その補充をすることができる。なお、補充に より選任された委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(委員会の議決等)
第27条 委員会の議決事項は、理事会の承認を得て効力を生ずるものとする。但し、委員会の議決事項のうち緊急を要する事項については理事長に報告のうえ、理事会の承認を事後とすることができる。
第 5 章 補 則
第28条 クラブの運営に必要な細則は、別にこれを定める。
付 則
この会則は〇〇の日から施行する。
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