マルチタスクについて

元ゴルフ場支配人の独り言

ここではマルチタスクについてゴルフ場での例をもとに話をしています。
今、少子高齢化による労働人口の減少が社会問題となっている中でのマルチタスクは一見して必然のようなとらわれ方をしていますが、その実情はどのようなものなのでしょうか?
実際にマルチタスクが行われているゴルフ場での実例を挙げて説明していきます。

目次

マルチタスクとは?

まずはこの意味について考えてみましょう。
ネットでキーワード検索をするとこのような説明文を見つけました

1 二つ以上のプログラムを、1台のコンピューター内で見かけ上同時に実行すること。あるプログラムの入出力の待ち時間中に、他のプログラムを実行すること。プログラムの切り替え方により、プリエンプティブマルチタスクとノンプリエンプティブマルチタスクの二つの方式がある。マルチプログラミング。マルチプロセス。

2 同時にいくつかの仕事をすること。また、そのさま。「―な法律家」「―な活動」

簡単にいうと、「違う仕事を同時に行う事」
と、いうことになるようです。
もうひとつ、説明文を見ていて気になるのが、「見かけ上」とか「そのさま」という表現です。
そこに注目してこれからゴルフ場におけるマルチタスクの現状について説明していきたいと思います。

ゴルフ場におけるマルチタスクは単に他部署のヘルプをイレギュラーに行っている、異なるシングルタスクを1人で絶え間なく行なっている。

というのが実情です。

説明文にあるような、

「同時に行なっている」わけではありません。

それは、マルチタスクが必要とされた背景に理由があるのではないかと考えています。

 

マルチタスクが必要とされた背景

それではゴルフ場においてマルチタスクが必要とされた背景について考えてみたいと思います。

事の始まりは慢性的な人材不足から始まります。

マクロ的な労働人口の減少は比較的通勤が不便なゴルフ場にとっては以前から深刻な問題ではありました。

平成のゴルフ場再生ラッシュの中でゴルフ場の業態も大きく変化してきました。

メンバー中心の高級会員制倶楽部からビジター中心のパブリック路線への変更。
それに伴いお客様を多く入れる高稼働のオペレーションが必要となり、

業態は「質」重視から「量」重視へとシフトしてきました。

「量」を追い求めると、お客様の数が増えることになり、サービス業の現場では仕事量が増えます。

そんな現場において「質」を落とさずにサービスを提供するにはお客様の数に合わせた施設の広さとスタッフの数が必要となります。

しかし、同時に経営破綻したゴルフ場を再生させるにあたり短期間での収益向上は至上命題であり、適正なスペースを確保するための施設改善や人材補充による増強に資金を投下するよりも、セルフサービスやシンプルサービスを推進することにより、少数精鋭で業務を行えるようにする方向に舵を切ることになるのです。

そんな中で注目されたのが「マルチタスク」です。

増えたお客様をさばくにあたり、狭いスペースで少ない人数で対応する事が効率的であるという考え方に至ったのです。

これが、ゴルフ場における「マルチタスク」が必要だと考えられている背景です。

 

メリットとデメリット

さて、ここからはゴルフ場マルチタスクのメリットとデメリットについて詳しくお話ししていきましょう。

メリット

①収益性の向上

経営側からすると、マルチタスクをする事で、セクションの数だけ必要な人数をそれより少ない人数で賄う事が出来ます。

単純に計算してもスタッフが2人必要なところを1人でやったとしても給与はその1人に2倍払うことはないのですからそれだけ利益率が向上します。

②人材育成につながる

それまで「シングルタスク」しかこなしていなかったスタッフが複数の業務を出来るようになるのですから、そのスタッフに注目してみると知識やスキルが増えることになり、成長につながると言えます。
ここで、冒頭に記載した「見かけ上」という言葉を思い出してみてください。
「人材育成」「成長」というのは特に外見だけでの評価ではなく、内容や質が大切だと思うのです。

そう考えてみると、マルチタスクによる人材育成というのは雇用者側のエゴではないかと思われます。

③情報伝達が早くて正確

ゴルフ場オペレーションにおいて、お客様の動線に沿って、各持ち場でのサービスが行われるわけですが、それらの担当者が情報を共有しながら連携する事で質の良いサービスを提供する事が可能になります。

その一連の作業を複数人で行うよりも、同じ者が1人で行えば、そもそも情報を共有することすら必要なくなります。

・デメリット

①「質」の低下

サービス業においては、先ずお客様を心地よくすることが業としての重要な事だと言えます

相手を気持ち良くするためのスタッフは気力も体力も充実してなければいけません。

マルチタスクをする事で、これまでのアイドルタイムが削られます。
休む暇なくスタッフは働き続ける事になります。
自然と笑顔もなくなり、元気な挨拶も少なくなります。
そして、もう一つは、シングルタスクを続ける事でのスキルアップが減速します。

マルチタスクはいわば「浅く広く」という思想に基づいているので、一つのことでエキスパートになる事を目指しているわけではないのです。

むしろ、サービス業におけるエキスパートは必要なく、必要最小限のアテンドだけをそつなくこなしておけばOKという考え方なのです。

「質」を犠牲にしてひたすら「量」と「スピード」を求めている事になります。

これはお客様にとっては商品価値の低下をもろに受ける形になるので、CSは低下します。

それに伴い低価格化を推進して何とかコスパは維持していくというデフレスパイラルに陥るしかなくなるのです。

 

②モチベーションの低下

現場でのスタッフのモチベーションはどんな説明をしようと維持する事は出来ません。
仕事をしていて、楽しいはずもありません。

これまでやってきた業務量が増えるのに待遇はそれほど変わらないのであれば、納得のしようがないのです。

これを推進する雇用側はスタッフを納得させるための話を一生懸命、知恵を絞ってしますが、自分がやるわけでもなく、経験すらしていないのですから、説得力はありません。

そして、1番のネックにあるものは、

ゴルフ場の現場においてはエキスパートは存在せず、今後必要ともしない」

という現場スタッフを蔑んだ思想ではないでしょうか。
そんな、考え方はスタッフにも見透かされているものです。
また、マルチタスクを実施することでの結果を数字だけで判断すると、あたかも上手くいっているように感じますが、実情はそれ程評価されることではないように思われるのです。

③お客様からの信頼失態

お客様はゴルフ場側が思っている以上に敏感です。
各セクションにおいて、同じスタッフが業務にあたっている。

「ここのゴルフ場は人が少ないのだなあ」とすぐに思ってしまいます。

そして、それなりのサービスしか提供できないのだとすれば、人件費をうかしていると直ぐに感じます。
そのゴルフ場の経営姿勢がどこに向いているのかを肌で感じるものです。

そういう路線に一度傾いたら、体制を元に戻すことも、失った信頼を回復することも、大変なパワーを必要とします。

スタッフもお客様も離れていく結果になるでしょう。

今後のマルチタスクのゆくえ

以上のように、メリットもデメリットもあるゴルフ場マルチタスクですが、どちらにおもむきを持つかによって、進むべきスタイルが変わってくるのではないでしょうか?

ゴルフ場を選ぶ際にも、サービスを重視するのか?コスパを重視するのか?
ゴルファーのニーズに応じてゴルフ場も変化していくものだと考えます。

それでは今日も素敵なゴルフライフを!

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