ゴルフ場開発において、地権者との交渉が進み条件的にも合意に至ると、契約書を交わす事になります。
契約については「賃貸借契約(地権者がその土地を貸す)」と「売買契約(地権者がその土地を売る)」の2パターンあります。
賃貸と売買ではそれぞれメリットデメリットがあるように感じますが、現段階での私の思う双方のメリットデメリットを記載しておきます。
目次
「賃貸借契約と売買契約のメリットとデメリット」
「賃貸借契約」
(メリット)
・借地面積に応じた賃料が定期的に入ってくる
・愛着のある土地を手放す事はなく、所有者でいられる
(デメリット)
・固定資産税は自分で支払いをしなければいけない
※固定資産税はその「土地の評価額×〇〇パーセント」と自治体により決まっているが、
実質的にはその分も含めた賃料の設定となっている。
・開発業者が自己破産や事業が立ち行かなくなった場合には契約が解除される事もある
「売買契約」
(メリット)
・査定額に応じた売買代金が一括で入ってくる
・以降、土地に関して維持管理する事は必要ない
・売却後に開発の状況が変化した場合でも特別な事情がない限り影響は全く受けない
(デメリット)
・自分名義の資産が減る
・賃貸の方が将来的にトータルでは多くの収入が見込める事もある
以上を踏まえて地権者はどれにするかを自由に選択する事になります。
もしあなたが地権者の立場ならどれを選択しますか?
では、ここで具体的な契約書の内容について、一般的なテンプレートを紹介したいと思います。
『ゴルフ場開発賃貸借契約書テンプレート』
まずは「ゴルフ場開発賃貸借契約書」について一例をみてみましょう。
土地賃貸借契約書テンプレート
賃貸人○○(以下、「甲」という。)と賃借人○○(以下、「乙」という。)は以下の通り、土地賃貸借契約を締結したので、その証として本書2通を作成し、各自記名押印の上、その1通を保管する。
第1条(賃貸借の目的)
甲は、その所有する末尾物件目録記載の土地(以下、「本件土地」という。)を現状有姿にてゴルフ場(付帯関連する施設も含む。以下同じ)用地の一部として使用することを目的として乙に賃貸し、乙はこれを賃借する。乙はこの借地目的に従って本件土地を使用収益することができる。
第2条(協力行為)
前条のゴルフ場ほか開発にあたり、乙において農地転用、開発許可等の申請に必要な同意書その他必要な書類の提出について、甲は乙より依頼があった場合に協力するものとする。
第3条(賃貸借期間)
- 賃貸借期間は○○年○○月○○日より満○○年とする。
- 前項の期間満了前に、甲・乙より別段の異議を述べない場合は、従前と同一の条件にて契約は更新されるものとし、甲・乙いずれかより異議があることきは期間満了までに甲・乙双方誠意をもって賃貸借の内容につき決定する。以後もまた同様とする。
第4条(賃料)
- 賃料は公簿面積に1㎡あたり○○円とし、年額 金○○円とする。
- 賃料の支払いについては、乙は、甲に対し、毎年〇月〇日限り金〇〇円を、甲指定の銀行口座により送金して支払うものとする。
なお、振込手数料は乙の負担とする。
第5条(賃料の改定)
賃料の改定の予定がある場合はここに記載
第6条(権利金)
権利金[1]の予定がある場合にはここに記載
第7条(保証金)
保証金[2]の予定がある場合にはここに記載
第8条(解除)
甲は、乙が次の各号の一に該当し、文章による催告の上〇〇ケ月後なお回復していない場合には、本契約を解除することができる。ただし、損害賠償の請求を妨げない。
- 支払期日に第4条の賃料の支払を怠ったとき
- 乙が破産手続開始決定を受けたとき
第9条(特約)
- 乙が第1条の借地目的を遂行する上で本件土地以外に甲所有の土地が必要になった場合または本件土地の中で不要となった場合は、甲・乙協議の上、乙は追加または変更(解除)することができる。
- 本契約締結日以降、甲が本件土地を売却処分しようとする場合は、乙に対して優先的買受権を認め、甲乙協議の上適正な価格で乙はこれを買い受けるものとする。
○○年○○日
甲:
乙:
物件目録
一 所 在
地 積
以上、○○筆、公簿面積○○㎡
では次に「ゴルフ場開発売買契約書」について一例をみていきましょう。
ゴルフ場開発売買契約書テンプレート
不動産売買契約書
甲:○○
乙:○○
甲と乙は、末尾「物件目録」記載の甲所有の土地(以下、「本件土地」という。)の売買に関し、次の通り契約を締結する。
第1条(売買物件)
甲は、甲が所有する本件土地を乙に売り渡し、乙はこれを買い受ける。
第2条(売買面積)
本件土地の売買面積は、登記簿上の表示面積によるものとし、本件土地の登記簿上の面積と実測面積とが相違した場合であっても、甲および乙は相互に相手方に対し売買代金の増減等一切異議・請求を申し述べない。
第3条(売買代金)
本件土地の売買代金は金○○円とする。
第4条(売買代金の支払)
乙は、第3条(売買代金)の売買代金を〇〇年○○月○○日限り甲の指定する銀行預金口座に振込により支払う。
なお、振込手数料は乙の負担とする。
第5条(引渡し[3])
甲は、第4条(売買代金の支払)に規定する本件土地の売買代金の受領と引き換えに、本件土地を乙に引き渡す。
第6条(所有権[4]移転登記)
1.甲は、第4条(売買代金の支払)の規定による本件土地の売買代金の受領と同時に、本件土地の所有権移転登記に必要な一切の書類を乙に交付し、乙の確認を得た上、両者協力してこの登記手続きを完了させる。
2.この登記手続に要する費用は、乙の負担とする。
第7条(所有権の移転)
本件土地の所有権は、甲が第4条(売買代金の支払)の規定により本件土地の売買代金を受領した時に、甲から乙に移転する。
第8条(危険負担)
天災地変等の不可抗力その他甲および乙のいずれの責にも帰し得ない事由により本件土地が紛失・毀損したときの損害は、第5条(引渡し)の規定による本件土地の引渡し前においては甲が負担し、引渡し後においては乙が負担する。
第9条(完全な所有権移転の保証)
本契約締結時において、本件土地について第三者の所有権・抵当権[5]・質権[6]・地上権[7]・地役権[8]・賃借権[9]・使用借権[10]・入会権[11]など、乙の所有権の完全な享有行使を妨げる何らかの権利の設定・付着があるときは、甲は、直ちに、これを削除するものとする。
第10条(契約不適合責任)
本件の種類又は品質に対して契約内容に適合しないものがある場合において、乙が甲に対してその不適合を知った時から1年以内にその旨の通知をしたときは、甲は、乙に対して民法560条以下で定める契約不適合責任を負う。
第11条(契約解除)
甲または乙において下記各号の一つにでも該当したときは、相手方は何らの催告なくして直ちに本契約を解除することができる。この解除は損害賠償の請求を妨げない。
- 本契約の条項に違反した時
- 手形・小切手を不渡にする等支払停止または支払不能の状態に陥ったとき
- 差押え・仮差押え・仮処分・競売等の申立てを受けたとき
- 破産・会社更生・民事再生または特別清算の手続開始の申立てがあったとき
- その他前各号に類する不信用な事実があったとき
第12条(管轄裁判所)
本契約に係わる紛争に関する訴訟は、甲の住所を管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする。
第13条(協議)
本契約に定めのない事項または本契約の条項の解釈について疑義が生じた事項については、甲および乙は、関係法令および慣行に従い、誠意をもって協議のうえ、処理解決する。
以上、本合意の成立を証するために本書2通を作成し、各々記名押印の上、甲および乙が各1通を保管するものとする。
○○年○○月○○日
甲:
乙:
物件目録
一 所 在
地 番
地 目
地 積
以上、〇〇筆、〇〇㎡
[1] 権利金:不動産の賃貸借契約を交わす際に、一時金として支払われる金銭のことで、敷金・礼金とは異なり、契約終了時に返還する必要のない金銭として扱われる。
[2] 保証金:将来発生するかもしれない債務の担保のために特定の関係にある者の間で授受される金銭。
[3] 引渡し:売買や賃貸借によって生じる民法上の概念。現実に占有状態を実現することだけでなく、占有を移転する旨の意思表示も引渡しとされる。
[4] 所有権:特定の物を自由に使用・収益・処分できる権利のこと。時効により消滅することはない。担保物権と用益物権などの一面的な支配権とは異なり、所有権は物の全面的な支配権とされる。
[5] 抵当権:債権者が担保とした土地や建物をもって弁済を受ける権利のこと。
[6] 質権:債権者が債権の担保として、債務者または第三者から受け取った物を占有し、債務不履行時にその物を処分して弁済を受ける権利
[7] 地上権:工作物又は竹木を所有するため他人の土地を使用収益することを目的とした用益物権。地上権は直接、土地に対して権利を持つものとされ、地主の承諾なく譲渡、転貸ができるとされている。
[8] 地役権:自分の土地の利便性を高めるために、他人の土地を利用することができる権利。この場合に利用される他人の土地のことを承役地という。
[9] 賃借権:賃貸借契約に基づく賃借人の権利。賃借人は物を使用する権利をもつ一方、賃料を支払う義務を負う。賃貸人の承諾がないと譲渡や転貸することはできない。民法上では賃借権の存続期間は最長で20年と定められている。
[10] 使用借権:無償で物を借りて使用収益した後、その物を返すことを使用賃借という。無償がゆえに借主の権利は弱い。
[11] 入会権(いりあいけん):一定の地域の住民が特定の森林、原野、漁場等を共同で利用する権利。その対象となっている土地を「入会地」という。
いかがですか?
私たちは日常、多くの契約を交わしながら生活をしています。
しかし、多くの場合、
その契約内容について深く理解することはなく契約を交わしているのではないでしょうか。
契約を結ぶ人たちの間では常に「誠意」を持って取引をする事が大切だと考えます。
土地を貸す人、借りる人、売る人、買う人、お互いが安全に安心して取引を行えるように契約はあるものだと考えます。
時間が許す限り、地権者には契約内容を詳しく説明して不安の無いようにしていく事が、借主や買主の責務だと考えます。
それでは今日も素敵なゴルフライフを!
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