2024年パリオリンピック開会式に学ぶこれからのゴルフ場運営について

ゴルフ場開発者の独り言

先日、テレビで2024年パリオリンピックの開会式をテレビで観ていて、ゴルフ場を運営していく中で、これまでの殻を破り更なる飛躍を目指して何か新しい事に挑戦する事について感じたことをお話します。

ゴルフ場に限らず、どんな仕事においても業績は大きな評価材料のひとつとなっています。

対前年、対予算、過去数年間の実績と比較してどうか、などなど。

ここでは全体的な経営者目線ではなく、グループコースの中にある一つのゴルフ場支配人の目線から捉えたチャレンジについて私の経験をもとにお話ししたいと思います。

 

目次

【2024年パリオリンピック開会式を観ていて感じたこと】

先日2024年パリオリンピックの開会式をテレビで観ていて、とても感動しました。

ご覧になって私と同じように感銘を受けた方もたくさんいらっしゃるかと思います。

賛否両論あるかとは思いますが、これまでの概念にとらわれず、それでいてこれまでの歴史への深いリスペクトもあり、両方をうまく合わせた、全く新しいことへのチャレンジを感じて、とても素晴らしい事だとわたくし個人としては感じながらテレビにくぎ付けになっていました。

 

・メインのスタジアムを利用しない

・セーヌ河を船で各国の選手を入場(というかパレード)させる

・セーヌ河沿にいくつか舞台を用意してアトラクションを行う事で選手入場とこれまでの開会式前のアトラクションを同時進行した

・アトラクションに参加するアーティストがフランス国内に限らず、世界的なアーティストを起用していた

・聖火台に気球を使い、空に設置していた

・エッフェル塔を中心とした光と音楽のコンサートホールのような演出

・6㎞のセーヌ河沿いのパリの街を選手のパレードや聖火ランナーと一緒に全世界へ映像として映すことによるパリの街の最大のプロモーションとなっていること

・パリコレやシルクドソレイユなどをイメージさせるアトラクションをオリンピックの開会式というイベントと複合させて演出していた

・最後はエッフェル塔の中腹でこれもカナダ出身で難病と闘っているセリーヌディオンによるフランスの名曲「愛の賛歌」を力強く歌い締める

 

最初から最後まで感動的で、フランスのパリで開催していると感じさせるものの、全世界の人たちの力を結集して平和の祭典を盛り上げているという事を感じさせるものでした。

これまでにない、これまでの慣習にとらわれない、新しい事へのチャレンジが人々へ驚きと感動を与えてくれた一大イベントであると感じた2024年パリオリンピック開会式でした。

 

【ゴルフ場業績について】

さて、今回の2024年パリオリンピックの開会式を行ったチームの責任者をフランス大統領のマクロン氏だとすると、彼こそ勇気をもって新しい事へチャレンジした責任者だといえるのではないかと考えます。

規模こそ違えど、今回のチャレンジをゴルフ場の運営に例えてみたいと思います。

ゴルフ場を運営する中で大切な事の一つとして、売り上げがあります。

売り上げを作る為に稼働と価格のどちらを重視するか?

先ずはゴルフ場の業績を評価する具体的な指標としていくつかあるうちの重要な項目を整理しておきましょう。

「売上高」「稼働(来場者数)」「価格(客単価)」「原価(経費、労務費、材料費)」「利益」以上、これらの項目についてそれぞれの比較が評価の対象となります。

最終的に「利益」を最大化させる為には「売上高」「稼働(来場者数)」「価格(客単価)」が前年、予算を上回り、「原価(経費、労務費、材料費)」が前年、予算を下回ることが見た目には綺麗な終わり方だと言えましょう。

単年度でそのような結果を残すと、必ず出てくるのが「前年が悪すぎたのでは?」「予算が低かったのでは?」という冷静な意見です。

更に「これだけの成績を残すと来年は大変だぞ」なんて意見も言われたりする事があります。

グループコースの一つのゴルフ場支配人にとってこの言葉は大きく二つの深い意味合いを感じてしまうものでした。

まず一つ目は、数値結果の裏に隠された定性的な状況。

ゴルフ場は比較的固定比率の高い原価構造をしています。

これはどれだけお客様を入れようが、経費については大きく影響を受けないという事です。

すなわち、「稼働(来場者数)」が増えたからと言って「原価(経費、労務費、材料費)」が増える事はそれ程ないという事。

何が違うのか?と言いますとズバリ「CSとES」に差が出てきます。

「稼働(来場者数)」が上がると「CSとES」は下がります。

「稼働(来場者数)」が下がると「CSとES」は上がります。

※詳しくは以前の記事を参考にしてみて下さい。

そんな中で「稼働(来場者数)」を上げたという実績は現場でのスタッフの仕事量が増えたという事でもあり、そこは十分に評価されるべき点であると言えましょう。

二つ目は、前年の実績を作ったのは誰で、今年の予算を作ったのは誰で、今年の実績を作ったのは誰かという事。

グループコースのゴルフ場支配人には転勤がつきものです。

私が現役の頃には平均して約2年~3年で次のゴルフ場への赴任を命じられていました。

新しく赴任したゴルフ場での初年度の前年や予算との業績比較となると、自分の実績ではなく、前任者との比較になります。

そんな状況の中で特に気になっていたのが「原価」の部分です。

ゴルフ場は固定比率の高い原価構造をしていると説明しましたが、イレギュラーな必要経費もあり、特に修繕費については施設やコースに関して必要な資金を使わなければいけない場合もあります。

そんな時に、「利益」を重要視するあまりに、修繕費を使わずに我慢するケースもあります。

それはゴルフ場や会社全体の発展を目指すというより、自分が担当した期間の業績を良く見せる為だけにする行為として、気付かれていないようで客観的には気付かれているのでした。

私もそのような気持ちで1年間やった記憶があります。

しかし、私の場合はそれをやった翌年も自分がやる事になり、結局は年をまたいだ修繕を余儀なくされました。

そのような事が現場では通常行われており、任された責任者は全力で単年度の業績確保の為にあの手この手を使って利益確保の為に日々努力しているのです。

 

【転換期(我慢する時期)について】

さて、そのようなゴルフ場の業績を確保するために責任者は日々努力をしているわけですが、あるレベルまで来ると限界点に到達します。

それは「稼働の壁」です。

売上を構成する二つの要素である「稼働(来場者数)」と「価格(客単価)」にはそれぞれの特徴があり、「稼働(来場者数)」には限界があり「価格(客単価)」には限界がありません。

ゴルフ場を運営するにあたり、着任したばかりの支配人はまず「稼働(来場者数)」実績に着目します。

まだまだいけると思うと、今の「価格(客単価)」を下げて「提供枠」を増やし、新しい「プレースタイル」を加えて枠いっぱいにお客様を入れようとします。

これは、

大都市圏周辺の集客が見込めるエリアにおけるマーケティング的には一つの成功法であり、わたくしもこの戦法で数年間連続して業績を向上させることに成功した経験があります。

言葉でいうのは簡単ですが、実際にやるとなると大変な思いもしなければいけません。

「稼働(来場者数)」を増やすと、

お客様からは「詰めすぎだ」「プレー時間がかかり過ぎる」とクレームを受ける回数が増え、最悪はそれが原因で会員を退会したり、リピーターだった人が来なくなったりするケースもあります。

「稼働(来場者数)」を増やすと、

従業員からは「仕事が増えて大変だ」「お客様からのクレームが増えて大変だ」「残業時間が増える」との不満が増えて、最悪はそれが原因で辞めてしまうケースもあります。

「稼働(来場者数)」を増やすと、

コース作業をする時間が短くなり、コース管理スタッフのモチベーションも下がり、コースの状態が悪くなり、お客様からのクレームが増え、商品価値が低下し、更なる「価格(客単価)」低下をせざるを得なくなります。

「稼働(来場者数)」を増やすと、

施設のあらゆるところにおいて維持管理も間に合わなくなり、老朽化も加速します。

結果的に「稼働(来場者数)」を増やすと、ある程度までは下げた「価格(客単価)」分のマイナスをカバーして売上を伸ばすことができますが、それにも限界がきます。

さらに、お客様対応等の仕事が増えた分に対して従業員の給与を上げなくてはいけない(これはある意味成功だといえる)、コース管理費用も上がる(コースコンディションを維持しようと思えば)、施設の修繕費も上がる、などで原価高騰を招き、気づいた時には利益が「稼働(来場者数)」が少なかったときよりも下回っているという状況にもなりかねません。

そうなったときに、「最大稼働の適正価格」から「適正稼働の最大価格」への戦略変更を行おうとしても時すでにおそし、すべての歯車が狂ってきます。

具体的には、

お客様の信頼回復、高稼働に慣れてしまった従業員のサービスレベル、コース状況の復旧、施設の回復を補うだけのニューマネーは時間をかけて利益を出していく「適正稼働の最大価格」の戦略では出てこないからです。

即効性があり、麻薬のように一度手を出すと止められなくなるのが「最大稼働の適正価格」

即効性はないが、安定した利益と運営が可能なのが「適正稼働と最大価格」

わたくしが、これからの激動のゴルフ業界で生き残っていくための基本戦略として「適正稼働と最大価格」を掲げているのはそれが理由です。

では「最大稼働の適正価格」から「適正稼働の最大価格」へのベストな転換期はいつなのか?

  • 業績が安定している(利益ベースで過去数年間の平均値を上回っている)

  • 平均稼働率が60%の状態

  • 従業員の数が少し不足している状態

このような状況の時に戦略を転換することがいいのではないでしょうか?

理由としては、

戦略転換にはある程度の期間が必要であり、その結果はすぐにはでないと予測されます、その間に事業を維持できるための体力が必要であり、適正な従業員の数を確保し、サービスレベルを高めるための社員教育も必要だからと考えるからです。

もうひとつ、大切なことは、

この転換期には我慢が必要である

ということです。

この転換期に着任している責任者は定数的な結果を示すことはできません。

すべては先行投資的な状況であり、「これは今後の躍進の為に必要な事であり、これをしなければ、ここを我慢しなければ、今後は業績が低迷する可能性もありうる」事を強い意志を持ってプレゼンしなければいけません。

 

【チャレンジ後の飛躍】

ここで、2024年パリオリンピック開会式に話を戻しましょう。

今回の開会式もこれまでも同じような感じでやっても良かったと思います。

4年に1度のスポーツの祭典、世界平和的な祭典の開催というだけ人々は心躍らされる事には間違いはなかったでしょう。

しかし、

同じことをやっていては人々の記憶にそれほど深くは残らないのではないかと思うのです。

わたしのようにそれほどスポーツに詳しくなく、オリンピックもにわかファンで、その時だけ試合を楽しみ、日本選手を応援する人も多いと思います。

そんなわたくしは、〇〇年〇〇オリンピックはどうだった?と聞かれたら、メダルを取った選手とその試合や競技で感動したことを少し思い出すくらいで、それも鮮明に〇〇年〇〇オリンピックでの〇〇選手と出てくるわけでもありません。

しかし、

今回の2024年パリオリンピックは既にわたくしの中では開会式が強烈なインパクトとして記憶されることでしょう。

そして、色んな意味でフランスという国の偉大さを確認した式典となりました。

おそらく、次回2028年の開催国であるアメリカのロサンジェルスはプレッシャーも感じているでしょうが、さらに驚きと感動を提供するに違いないと期待したいです。

それが、今回のフランスがチャレンジしたことによる進化だと信じてやみません。

 

それでは今日も素敵なゴルフライフを!

 

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