ここでは一般的な18ホールのゴルフ場を一つオープンさせるのに必要と思われる費用についてその算出方法も含めて解説します。
目指すゴルフ場のグレードや営業する場所によってもかけるコストは異なると思われますが、ごく一般的なスタンダードなゴルフ場を事業として成立させていくために必要な初期投資額をシュミレーションしてみようと思います。
目次
ゴルフ場の収益性に関して
先ずは、ゴルフ場の売り上げについて簡単に説明します。
ゴルフ場はナイター設備がある場合を除くと、その営業時間帯は日の出から日没までの太陽の光があたる時間、いわゆる日中が営業時間となります。
そこで平均7分間隔でスタートして9ホールのプレーが終わると、一旦クラブハウスに入りレストランでの食事休憩をし、のこりの9ホールをプレーして終了となります。
日照時間におうじて、プレーできる人数の上限も変化してきますので、夏場が一番多く入るし、冬場が一番少なくなります。
プレースタイルとその組み合わせによってプレー可能な人数は変化もしますが、18ホールのゴルフ場で平均して冬場の最小36組~夏場の最大70組まで入ることができます。
年間で平均すると約48組で、これに平均的な一組の人数を3.5として48組×3.5で一日の平均が168名、一年間で168名×365日の61,320名となり、業界的には18ホールのゴルフ場で
年間6万人入っているところは人気のゴルフ場と言えます。
さてこれに平均的なお客様一人当たりの単価を10,000円とすると、年間の売り上げは約6億円という事になります。
ここから、材料費、人件費、一般経費などの原価が引かれて利益を残すことになるわけですが、一般経費の中に「地代」というものが含まれてきます。
これが、今回のゴルフ場開発に必要な費用の一部になります。
地代について
地代とはゴルフ場を運営している土地の賃料の事で、その借りている土地の面積に単価をかけて算出し、地権者に対して年に一度支払いを行うのが一般的です。
ゴルフ場を運営するのに必要な土地の面積は一般的な18ホールで30万坪~40万坪(東京ドームの約21個以上入るくらいの大きさ)と言われており、この面積に一坪あたりの賃料をかけたものが、そのゴルフ場の年間に必要な賃料となります。
これが定期的に経費として負担しなければいけない、いわゆるランニングコストということになります。
話を開発の段階での土地交渉に移しますが、土地交渉をする際に契約の種類は「売買」か「賃貸」の2択になります。
この時「売買」となると、ゴルフ場の運営開始前に金額を支払い買い取る契約をするわけですので、ゴルフ場運営開始以降にランニングコストがかかることはありません。
賃貸での契約を交わした場合に、その賃料が開場後のゴルフ場のランニングコストとなってきます。
ですので、開発業者側からすると土地交渉の際にはできれば買取で話を進めたいのが本音ですが、そこは地権者の方の意向を尊重することになります。
地代の上限とは
ではゴルフ場の収益性に話を戻しましょう。
平均的なゴルフ場の年間の売上は6億円と仮定した場合、そのうち地代を除くと約65%~75%の原価がかかり、利益率は25%~35%が一般的なゴルフ場の収益性です。
金額にして約1億5千万円~2億1千万円が年間の粗利になります。
ここから逆算して地代の最大値を推定してみます。
1億5千万円(利益の最小推定値)÷40万坪(面積の最大推定値)=375円/坪
2億1千万円(利益の最小推定値)÷30万坪(面積の最大推定値)=700円/坪
つまり、土地の賃料は一坪あたり375円~700円(㎡あたり113円~212円)が限界であるという事になります。
ただし、このシュミレーションした推定金額は、参考値であり来場者数、単価、経費のすべてが予測通りになったとした場合の数値になりますので、もしこの金額で賃料を設定した場合には、業績が単年度で赤字となり事業が成り立たなくなる可能性が大いにあるという事も付け加えておきます。
開発に必要な費用
さて、ここまでで、ゴルフ場の運営が開始された後に想定されるゴルフ場の収益性から地代の限界値がおわかりになったかと思います。
ここから開発に必要な費用を推定します、ちなみに土地の買収については平均的な価格で5,000円/坪と仮定します。
※一般的なゴルフ場用地買収の時の「山林」などの金額は1,000円/㎡~2,000円/㎡
18ホールで30万坪の面積のゴルフ場開発を想定して
・全て売買契約をした場合:5,000円/坪×30万坪=15億円
・全て賃貸契約をした場合:537円/坪×3×30万坪=4億8千330万円
※坪単価は平均値、また賃貸契約の場合、初年度に3年分の賃料を支払う契約内容になるため
・売買と賃貸が半々の場合:15億円÷2+4億8千330万円=9億9千165万円
が土地買収に関して必要な初期費用となります。
これにクラブハウスの建設費用、コースの造成費用を合わせると、約50億円~100億円くらいの費用が必要となる計算になります。
それらを考えますと、投下した資金を回収していくには少なくても20年以上の時間が必要であるという事がお分かりいただけると思います、一般的な賃貸借契約書で契約 期間が20年の自動更新付きの内容になっているのもそれが理由です。
最後に~これからの展望
いかがですか?
ゴルフ場開発にはそれなりの費用がかかる、それもオープン前の先行投資となると企業側もそれなりの勝算と覚悟をもって取り組まなければいけません。
これまでに感じてきたことは、この事業を根底で支えているものはいち民間企業の利益追求ではなく
『多くの人たちの思い』
というものでした。
具体的には開発事業者の事業拡大への思い、地元有力者の地域活性化への思い、地権者の所有土地の有効活用への思い、関係各所の思惑、というものです。
基本的にすべての関係者たちの思いはその熱量に差はありますが、同じ方を向いていると感じています。
「この土地にゴルフ場を開発する」
という思いについての異論はほとんど感じられません。
また土地交渉を進めていくうえで、価格交渉というものは避けて通れないものです。
売主、貸主は1円でも高く契約したいが、交渉が決裂したらこれまで通りの無一文の土地になってしまうという思いがあります。
買主、借主は1円でも安く契約したいが、交渉が決裂したら計画自体が滞ってしまうという思いがあります。
しかし、目標と終着点は同じであるので、そこはベクトルを同じにするべく今期強く交渉を続けて開発までこぎ着けたいと考えています。
今のIT化された最新のビジネスシーンからするとこのゴルフ場開発事業というのは少し時代遅れの仕事かもしれません。
これからのゴルフゲームはメタバースのような仮想空間で楽しむ時代になるかもしれないと予測される中での、土地を造成してのゴルフ場オープン。
ゴルフ場の未来予測をすると今回の取り組みについてはリスクもあることは感じている人も多いかもしれません。
土地を造成するために、まずは地権者との土地交渉を行い個別に契約を結んでいく。
これまでに交わした契約に関しても、司法書士への作業依頼、各種証明書添付、相続が絡むとそれに対する処理、様々な事務処理が必要となってきます。
これらの契約締結に関してもブロックチェーンのような技術が発展していけばもっとスムーズに出来るのではないか?所在不明の土地所有者の調査ももっとスムーズにできる方法はないのか?
これからのAIやIT技術の進化進出によりこれらの事務処理が簡素化されもっとスピーディーに行われるようになることを期待してやみません。
それでは今日も素敵なゴルフライフを!
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