ゴルフ場におけるQSCHについて

元ゴルフ場支配人の独り言

QSCHとはQ:クオリティ(質)、S:サービス(奉仕)、C:クリーンネス(美化)、H:ホスピタリティ(おもてなし)のことを言います。飲食店やサービス業の評価をする際によく使われる言葉です。私も最近この言葉をよく耳にするようになりましたが、今回はゴルフ場においてのQSCHについて考えてみたいと思います。

 

目次

ゴルフ場においての Q:クオリティ(質)とは

質とは

「そのものの良否、粗密、傾向などを決めることとなる性質。実際の内容」

の事をいうそうです。

さてゴルフ場におけるクオリティ(質)とは具体的に何の質をいうのでしょうか?

私的には「コース」「食事」「サービス」だと考えています。

 

コースの質

ゴルフコースを評価するときによく「コースコンディション」「ホールレイアウト」「ホールロケーション」「コースクオリティ」の4つを評価の指針にしたりします。

この中で、レイアウトとロケーションはゴルフコース造成の段階で決まるものす。

有名な設計家や著名人の監修で作られたコースはそれだけで価値が上がったりします。

そして、レイアウトとロケーションは周りの自然環境との調和によっても変化してくるもので、出来上がった後は、私たち人間の力では操作できないものでもあると考えられます。

出来あがったばかりの綺麗なコースも魅力的ですし、長い年月をかけて自然と融和したコースも私たちを魅了します、そしてトーナメントなどで名シーンを演じたホールとして私たちの記憶に刻まれる事もあります。

ある意味、ホールレイアウトとホールロケーションは見えない力によって作り上げられると言ってもいいかもしれません。

一方、コースのコンディションとクオリティは私たち人間の力によっていかようにもなります。

コンディションについては天候や自然の状況に左右される事もありますが、概ね日々のコース管理業務において芝の管理やコースメンテナンスをしっかりとすることで良い状態を維持する事ができます。

さてメインのクオリティ(質)ですが、ゴルフコースに行ってティーイングエリアグリーンジェネラルエリアやその他の様々なゾーンにおいて、私たちの五感で感じる質というものがあります。

特に芝と土壌、砂についてはそのクオリティ(質)というものを感じる事が出来ます。

芝については見た目の美しさに加えてショットの際のクラブの抜けが良かったりする為には芝の適正な太さや固さ、長さ、密集具合が大切な要因となってきます。

使用する芝もそのゴルフ場のある地域によって変わってくるものですが、コストをかけて良質な芝を使用すればそれだけプレーもしやすくなります。

バンカーやコースメンテナンスで使う砂にも様々な種類があります。

海砂や川砂、焼き砂など、これらもコストをかけて良質な砂を使用する事でプレーも格段にやりやすくなります。

 

食事の質

さてゴルフ場のレストランで頂く食事についてです。

ゴルフ場のレストランと一般的な飲食店との一番の違いは「滞留時間」です。

ゴルフ場での食事は前半のプレーと後半のプレーとの間の時間帯に頂くもので、40分~90分の間での食事になります。

そして1組2名~4名の団体客が約7分間隔で入店してきます。

18ホールのゴルフ場ならそれが2団体ずつ、27ホールなら3団体ずつ、36Hなら4団体ずつと。

デッドな時間帯では一般の飲食店での満席状態が続くというイメージです。

そのような環境において求められる事は「早くて美味い」食事です。

つまり仕込みから下ごしらえ、調理全般にわたって時短が求められます。

そんな中でクオリティ(質)を維持する為にはやはりコストをかけて高級素材を使い調理する必要があります。

良質な食材を使用して時間をかけずに調理出来て美味しいメニューを作る!

これがこれからのゴルフ場レストラン運営に求められる事ではないでしょうか。

 

サービスの質

サービスそのものについては後述するとして、ここではそのサービスのクオリティ(質)について考えてみたいと思います。

ここではゴルフ場におけるサービスを主に人的サービスと捉えて話をしていきます。

ここまでコースの質は芝や砂、食事の質は食材で決まる、つまり原材料を良質なものにすることでクオリティ(質)は上がると話してきました。

すなわち、人的サービスの質を上げるためには良質なスタッフをそろえるという事になります。

コース材料も食材もコストをかけて良質なものを購入すればよいという事でしたが、人材については話が複雑です。

初めからエージェントなどを利用して優秀な人材を雇うという選択肢が一つ。

もう一つは、人材育成。

そう、教育です。

ゴルフ場におけるサービスの質向上の為には人材育成が不可欠だと考えます。

特に思想の変化は求められるでしょう。

これからのゴルフ場は自動化がどんどん進んでいきます。

お客様の必要な情報の入手と手続き等は全て一つのデバイス(いまのところ携帯電話が一番の候補)で出来るようになるでしょう。

それを使いこなせる人とそうでない人とに分かれる時期がしばらく続き、将来的には全てのお客様がゴルフ場スタッフとのコミュニケーションは必要なくゴルフ場での一日を過ごす事が可能になる日がくると思います。

そんな将来像を予測しながら、これからの人材育成を各企業は行っていく必要があると考えます。

 

いずれにせよ、コースもレストランも人的サービスもそのクオリティ(質)を高めるためにはコストが必要になるという事がお分かりいただけたと思います。

それらに資金を投下できる企業がこれからの勝ち組になっていくと考えます。

 

ゴルフ場においての S:サービス(奉仕)とは

次にサービスについてです。

ゴルフ場におけるサービスとは「コース」「レストラン」「ショップ」「プレースタイル」になるかと思います。

※参考記事:「ゴルフ場のシンプルサービス化について」

 

コースにおけるサービス

コースのクオリティについては前述したとおりですので、ここではコースセッティングについてお話したいと思います。

よくプレーをしていて「いや~今日のピンポジは難しいな~」とか「このティポジションではFWにショットするのは難しいな~」とボヤいたりしませんか?

これらはゴルフ場側でいかようにも操作できるもので、通常は前日の夕方にコース管理の方でセッティングするものです。

セッティングする際に考える事は「コースの難易度」「芝の育成」「作業の効率化」をそれぞれ優先順位をつけながらセッティングしていきます。

ピンポジションもティポジションも同じところに長くセットしておくと、そこがお客様により集中的に踏まれて芝が痛んでしまします。

基本的には毎日違う場所に変えるようになっています。

そして、そのポジションによって、ホールの難易度が変わってきます。

ティポジションをどこにセットするかで、ティショットする際にターゲットに打ちやすかったり打ちにくかったりします。

ピンポジションはパットの難易度に大きく影響してきます。

基本的にはグリーンの真ん中のフラットな部分にセットするのが最も易しいと考えますが、時に斜面の途中にピンが立っている場合があります、その時は方向性と距離感の両方がどんぴしゃりでないと入らないケースがあり難易度は非常に高くなります。

最後の作業の効率化においては、出来ればグリーンへの出入り口付近がベストだと考えられます。

これらの要因を踏まえてコースのセッティングをするのですが、それがコースの難易度を変えるので、ラウンド時間にも大きく影響を及ぼします。

ゴルフ場としてはお客様が多い日にラウンド時間がかかるのは宜しくありません。

※参考記事:ゴルフプレーのラウンド時間を短縮できるためにゴルフ場に出来る事

ですので、比較的お客様の多い日の週末はラウンド時間をかけたくないので、コースの難易度は易しくします、すなわち、コースセッティングを易しくするという事です。

ベストスコアを出したいときは週末に行くことをお勧めします。

(ちなみに私のベストスコアが出た日は夏の土曜日でした)

 

レストランにおけるサービス

食事のクオリティについては前述したとおりですので、ここではホールでのサービスについてお話したいと思います。

よく「上げ膳据え膳(あげぜんすえぜん)」という言葉を耳にすると思います。

これは食事の際に、食事が配膳されて、食後は下げられる事を直接意味しますが、大きく食事以外のことも含めてサービスがいたれりつくせりの事もいいます。

最近はフードコートのような、呼び出しベルを使ってセルフで食事をとりに行くスタイルのゴルフ場も増えてきました。

ゴルフ場のグレードに応じてスタイリッシュな食事が楽しめるのも良いかと思います。

そして、この分野においては配膳ロボットのようなテクノロジーの参入が今後加速度的に進んでくるとも考えられます。

配膳するのが人なのか?機械なのか?そして食事中の気の利いたあいさつや会話をするのが人なのか?機械なのか?

あなたならどちらが良いですか?

それは近い未来の話として、今は

食事の楽しい時間をお客さまに気持ちよく過ごしていただくよう、ゴルフ場レストランのスタッフは常に笑顔と明るいあいさつと丁寧な言葉使いをしっかりと続けていく事が重要になります。

 

ショップおけるサービス

ひと昔のゴルフ場ではゴルフ用品と言えば定価通りの価格で品数も限られたものしか販売していませんでした。

ゴルフ場に行くときは事前に専門店で必要なものを調達してから行くようにしていたものです。

ですが、今は量販店並みの品ぞろえとリーズナブルな価格でゴルフ商品を提供するゴルフ場が増えてきました。

これでお客様はゴルフ場で必要なものは手に入れる事が出来て、不安なくプレーを楽しむことが出来るようになりました。

これらもお客様に対してのサービスの一部であるのですが、商材を仕入れて販売するというのは基本的にリスクがあります。

特にアパレルなどは売れ筋を仕入れて店頭に置くのですが、売れ残ったりすると型落ちしたりする前に値下げして販売しなければいけなくなります。

これからは、商品の選別にも力をいれながら、お客様のニーズに合わせたショップ運営が求められてくるでしょう。

 

プレースタイルにおけるサービス

ゴルフプレーは基本的には前半の9ホールを終了すると、食事休憩をはさんで後半の9ホールをプレーするスタイルが日本では主流となっています。

これに対して、前半後半の9ホールを休憩なしで続けてプレーするスループレーというスタイルもあります。

また、18ホールをプレーするのではなく、時間に合わせて9ホールで終了するハーフプレーや早朝にスタートする早朝プレー、夕方にプレーする薄暮プレーなどがあります。

キャディ付きのプレーに対して、キャディがつかないセルフプレーがあります。

シーズンにもよりますが、日照時間の長い夏場にはいろんなスタイルのプレーを楽しむことが出来ます。

これら多くのスタイルを用意できるゴルフ場はお客様も選択肢がたくさんあり、プレーヤーのライフスタイルに合わせて時間を友好的に利用してゴルフを楽しむことが出来るという点でサービスレベルが高いと言えるでしょう。

 

ゴルフ場においての C:クリーンネス(美化)とは

以前の記事でも言いましたが、

私の考えるサービスレベルで最も重要視しているのはこの『美化』になります。

どこを奇麗にしておくというのは基本的にお客様の動線上及びお客様の目に見える場所になるかと思います。

ゴルフ場で働くスタッフの身の回りのすべてのシーンにおいて綺麗にすることを続けていく事が出来れば尚更いいと思います。

ゴルフ場やサービス業、飲食業、ほとんどの接客業において、お店を奇麗にしておくという事は基本的であり、その会社のQSCHを図るうえで最も参考になるのではないかと考えています。

それは、先ず人間の五感で目から入る情報が、一番インパクトがあるという事。

見た目はとても大切で、そこから考えられる事がたくさんあるのも事実です。

お客様を迎えるにあたり、お店を奇麗にするという事は、そのお客様に気持ちよく過ごしてもらいたいという気持ちの表れでもあります。

そして、そこで働くスタッフを映す鏡とも言えます。

綺麗なお店とそうでないお店とでは、スタッフと接する前に決まる印象が違います。

綺麗なお店ではスタッフに色んな事を聞いてみたいと思いますし、そこに陳列している商品を購入しようかと思います。

逆にそうでないお店ではスタッフと話す気持ちも薄くなってしまいますし、そこに陳列している商品も魅力的に見えないもので、購買意欲が低下します。

特にゴルフ場はお客様の動線が長く、目につくところは広大になります。

玄関、駐車場、フロント前、ショップスペース、マスター室前、レストランスペース、コンペルーム、トイレ、更衣室、脱衣所、浴室、コース内全域、などなど。

多くの場所で美化に努めなければいけないのです。

毎年マスターズの開催されるオーガスタナショナルGCのように完ぺきとはいきませんが、出来る限りの努力をゴルフ場従業員はしています。

 

 

ゴルフ場においての H:ホスピタリティ(おもてなし)とは

それでは最後にホスピタリティ(おもてなし)についてです。

みなさんはホスピタリティと聞いて、何を想像しますか?

何を持っておもてなしと感じますか?

調べてみると一般的には様々な見解がありますが、ここでは私の経験から私の定義するホスピタリティをお話したいと思います。

私の定義するホスピタリティとは「お客様との信頼関係」だと捉えています。

ゴルフ場には様々なお客様が来場されます。

その中には自分に合う人やそうでない人、好きになれる人やそうでない人、尊敬できる人やそうでない人、歓迎する人やそうでない人、などなど、たくさんのお客様がいます。

私はゴルフ場の支配人をしていながら大事にしている事があります。

それは、「全てのステークホルダーを同じように愛する事」です。

そこには自分自身の感情よりも支配人としての公人であるという事をなによりも優先させなければいけないという思いがあるからです。

全ての人を愛するように接するには相手を正しく理解しなければいけません、自分が相手を正しく理解すると、自分も相手に正しく理解されるようになります。

そこに相互の信頼関係が気づかれ、互いに気配りと気遣いが出来るようになります。

そう、

私の思うホスピタリティとは一方的ではなく、互いにおもてなしの心を通わす事が出来ている環境の事です。

客観的にみると、スタッフとお客様とが笑顔で仲良くリレーションシップが図れている環境。

これこそがホスピタリティの高いお店であると言えるのではないでしょうか。

そんな環境を目指して日々、自己啓発を含めて精進しているところです。

 

最後に

いかがですか?

ゴルフ場におけるQSCHについて深堀してみました。

ゴルフ場に行くときにはそんな企業努力もしているのだという事を感じながら違う目線でゴルフを楽しむのも良いかもしれませんね。

それでは今日も素敵なゴルフライフを!

 

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