ここではゴルフ場支配人の仕事について、私の経験から思う事を「元ゴルフ場支配人の独り言」として書かせてもらっています。
ゴルフ場支配人という仕事の現場をはなれた今だからこそ思うところがあり記事にしてみました。
これは一般的ではなく私個人の見解であるので、他のゴルフ場支配人の意見とは異なっている点があるという事は事前にご了承ください。
目次
「ゴルフ場支配人の仕事」
まずはゴルフ場支配人の仕事について説明させていただきます。
私の思うゴルフ場支配人の仕事は大きく以下の3つです。
営業(マーケティング)
管理(マネジメント)
創造(クリエイト)
以上、私は現役時代これをゴルフ場支配人の職責MMCと勝手に言っていました。
一般企業の管理職者としての職務内容とほぼ同じだといえますが、内容的にはゴルフ場特有の戦術や戦略があります。
では具体的に説明させていただきます。
営業(マーケティング)
私は現役時代、通常の日は一日の70%の時間はこれに費やしていたものです。
それは私の売上至上主義の信念に基づく行動であり、これが現役時代に失敗したなとおもわせる事に繋がっていると今思うと考えています。
ゴルフ場における営業には大きく2つあり
「会員権販売」と「集客営業」
(会員権販売)
会員権販売についてはゴルフ場によって新規会員募集をしているゴルフ場と募集をしていないゴルフ場にわかれています。
これは会社としての経営判断となるのですが、そのゴルフ場を「メンバーシップコース」として運営していくのか?「パブリックコース」として運営してくのか?を考えて、「メンバーシップコース」で運営していく方針でなおかつメンバーの数が足りないコースは新規で会員を募集します。
※メンバーコースとパブリックコースについての記事は以前アップしていますので、それを参考にしてみて下さい。
メンバーコースとパブリックコースとではそれぞれメリット・デメリットがありますが、メンバーシップの場合、新規で入会した時の一時金としての『入会金』とそれ以降の『年会費』が毎年入る事になります。
その代わり、メンバーとしての優遇措置(プレーの優先権、優待料金)に加えて、ビジターよりも好待遇にしなければ納得してもらえない、言い方は悪いですが、分かりやすく言うと「わがままを聞かなければいけない」特に高齢者の多いメンバーシップコースでは「介護」とも揶揄されるほどのサービスを提供しなければいけない場合もあります。
そんなデメリットを覚悟しつつも、そのゴルフ場の目指す運営方針によっては新規会員募集により利益を維持するという戦略も選択肢の一つです。
そんな中で私のやっていた支配人の業務としての新規会員募集方法は、現メンバーからの紹介、よく来るアクティブビジターへの入会案内、提携ゴルフ練習場でのチラシ配りや直接の声掛け、来場履歴者への案内DM発送などでした。
会社にもよりますが、新規会員募集については報奨金がつくケースが多いようでした。
(集客営業)
そしてもう一つの「集客営業」
これには様々なマーケティングのスタイルがあると思うのですが、私が現役時代、日頃の70%の時間を費やしていたのは「レベニューマネジメント」と呼ばれる思想でした。
今から10数年前にこの思想とであい、独力で勉強し実践していたものでした。
この思想の基本理念は
「最適な商品を最適なお客様に最適な料金と最適なタイミングで販売するこれが実現した時の売上高は最大である。」
という考え方です。
提唱された当時は「リストラの要らない魔法の営業手法」とも言われ、特に航空会社やホテルなどの「席」や「部屋」などの繰り越しの効かない在庫を販売する種のビジネスには最適な思想であったと考えられていました。
これに初めて出会った時の私は衝撃を受け、「これならどんなビジネスでも上手くいく」と、世界観が一変した事を今でも覚えています。
具体的に何をするかと言いますと、簡単に
「予約状況に応じてその日の料金をコントロールする」
事です。
これを4カ月先までの日々の予約をチェックして毎日行うのです。
レベニューマネジメントにであい20年弱経った今でも私の中では、どんな仕事をするにしても結果を検証する際には「商品、お客様、料金、タイミング」この4つのファクターが全て最適であったのか?をチェックするようにしています。
この思想は間違っていなかったと思いますし、これかもどんな仕事をするにしてもこの思想に基づいて実践していくと思います。
(支配人業務としての営業失敗)
ただし、この思想が過激になると思わぬ落とし穴が待っていて、私は見事にその穴に落ちてしまったと今になって反省しているのです。
先程述べた「繰り越しの効かない在庫を取り扱う」ビジネスにおいて、その「刹那的な商品を売切らなければ意味がない」という考え方から、「売れ残るくらいなら1円ででも売っておこう」とう極端な発想に陥ってしまい、「安売りによる大量販売」に突き進んだ結果、一時期は好結果を出しましたが、気付いたら後戻りが難しい状況になっていたものでした。
最大稼働近くまで行った先に、そこから商品価値を高めて単価アップにより売上高をあげようとるす戦略は大変難しいものです。
それは「商品、お客様、料金、タイミング」の4つのうちWebを最大利用して「料金とタイミング」のみをコントロールして稼働のみを追求している間にいわゆる「高単価」を見込める「商品とお客様」を失ってしまっていたからです。
良い言い方をすれば「(料金を下げ稼働をあげたことで)ゴルフの敷居を下げてカジュアルに多くの人にゴルフを楽しんでもらえる環境を作った」というのが私の功績であると自己評価するのですが、一方で、悪い言い方をすれば「(料金を下げ稼働をあげたことで)ゴルフ場の質(コースを含めた商品価値)を自ら下げてマナーの悪いお客様を増やし、紳士的なお客様が去っていった」と酷評されても仕方がないと思えるのです。
現役時代にも、この低単価高稼働の戦略は自分のいる間は通用するだろうが、その後は違う戦略を講じない事にはこれ以上の成長はのぞめないだろう、と感じていたものでした。
その後の営業は後進にゆだねる形になりましたが、自分が信じてやってきた事に対して、その時の会社をとりまく状況から限界を感じ、これ以上の成長を続けるのは今の環境と自分では適任ではないと考えたことが、私がゴルフ場支配人を退いた理由の一つでもありました。
管理(マネジメント)
さて、次に管理についてですが、ご承知のとおり一言で管理と言っても、その内容は多岐にわたります。
人や組織全体に関しては以前の記事を参考にしてもらうとして、ここでは数値管理について話してみたいと思います。
企業としての一般的なPL(損益計算書)の中で「売上」、「経費」、「利益」と大きく3つが数値としてフォーカスされますが、私もゴルフ場支配人として、そのゴルフ場の3つの数値に対して責任を持つ立場にありました。
先程言いましたように
私は現役時代、通常の日は70%の時間を集客営業についやしていましたので、当然私の中では「売上」が一番重要であるとの認識でした。
ゴルフ場の「売上」は天気にも左右される事もありますので、うまくいかない時もあります。
最終的には「利益」が支配人の評価ポイントともなりますので、「売上」が思うようにいかなかった時には「経費」をコントロールして「利益」を確保できるというチャンスが残っているのも、この仕事の醍醐味であり面白いところでもありました。
そんな、3つの数値を管理しながら対予算、対前年と結果を検証する際に、私個人としての自己評価は次の順でした。
出来の良い順に
①「増収増益」②「増収減益」③「減収減益」④「減収増益」
先程の支配人の評価ポイントとして「利益」確保が重要だという事を考えると、普通なら順番は⓵「増収増益」②「減収増益」③「増収減益」④「減収減益」になると考えがちですよね。
しかしながら、私個人の数値管理としての流儀は「長期的な考えから「経費」は将来的な投資としても必要なものは使うべきタイミングで使う!」ということでした。
よくある「売上」が少ないときは「経費」を抑えて「利益」を確保するという一般的な考え方が好きではなかったのだと思います。
これはあえて私が「経営者」でなく、一従業員一サラリーマンであるがゆえの甘えた発想であるのは否めません。
プライベートでは、必要なものがある時でも、何か今あるもので代用できないか?もっと安いものがあるのではないか?と節約する性格なのに、会社では「良いものを使ってこそ良い仕事が出来るのだ」と大盤振る舞いしていたものでした。
年間で数億円の経費を使える権力を持った自分にプライベートとは違う自分を感じられるのも快感だったのでしょう。
そして「自分の使命はたくさんもうけて従業員にたくさん給与を払って、休みもしっかりとってみんながたくさんお金を使って日本のGDPをあげる事なんだ!」と息巻いていたものでした。
(ここでも支配人業務としての管理失敗)
ここでも私は支配人として管理面で失敗したと思われる事を正直に話したいと思います。
それは『人材育成と評価』についてです。
私が育成して評価して昇給昇格したスタッフが違う管理職者の元ではそれほど評価されない、最悪には酷評される事がありました。
これは自分自身にとって、とても辛くて悲しい現実でした。
かつての自分の部下の事を新しい上司から酷評されるたびに、自分自身が酷評されているかのように責任を感じて辛いものでした。
一方でその時の私の気持ちとしては、そのように酷評した管理職者に対して「それはあなたに問題があるのでは?部下をしっかりとマネジメントしてその人のパフォーマンスを最大化させるのが管理職者としての力量ではないのか?」と、そして「私の元ではとても優秀で楽しく仕事をして結果を出していたのに、環境が変わってそれが出来なくなっているのはその事業所の長であるあなたがうまく管理出来ていないからではないのか?」と心の中で叫んでいたものです。
ここで、私が反省するべきは、そのスタッフが自分と一緒に仕事をする場合にのみ気持ちよく楽しく最大パフォーマンスになるように育成していた事でしょう。
「これから先、どんな環境でも、どんな上司の元でもそのスタッフが良い仕事が出来るように育成する」という事が出来ていなかったのです。
かつての自分の上司から叱責を受けた際に「私ならいいけど、他の人なら注意されるぞ!」と言われたことがあります。
その言葉は私に「どんな上司の元でもしっかりと仕事が出来るようになってほしい」という気持ちが含まれていたのでしょう、その言葉が私には不足していました。
要するに私は自分色にスタッフを染めていたのか、「数値的な結果を出せばどんなやり方でも認める」「私よりもいい結果を出せるなら、君のやりかたを尊重しよう」という考え方、あまりにも「売上至上主義」的な自分の考え方が、上司に対して少し協調性が欠けるスタッフに育ててしまったのか?と反省しているところです。
創造(クリエイト)
さて、最後にこの創造という仕事の話をさせていただきます。
現役時代に周りを見渡すと⑴と⑵は出来ているがクリエイティブな考えや行動をしていない支配人が多かったように感じていました。
支配人になると現場のシフトに入る必要がない分、自由な時間が出来ます。
その時間を無駄にせず、常にこれからのゴルフ場について考え、行動する事がゴルフ場支配人には必要ではないでしょうか?
私は常に考えるようにしていました。
その内容を忘れないようにこのブログに記事として記録しています。
コロナが始まった2020年にこのブログを始めて約4年経過しました(2024年3月時点)
その間に私は2030年頃には訪れるだろうと言われている「シンギュラリティ」に向けて、様々な技術的革新によるゴルフ場への可能性を考えてきました。
今、ゴルフ場が抱える様々な問題点を技術が解決してくれる、そして更に便利で豊かなゴルフライフを楽しめる時代になると期待しています。
ただ誰かがやってくれるだろう革新を待つのではなく、それらの技術を駆使して具体的にゴルフ場オペレーションで役に立つシステムを考えて、提案して、自ら実現していきたいと思い、今回のゴルフ場開発のプロジェクトに参加しています。
これまでに私が予測してきた、将来ゴルフ場で起こるだろう驚くべき変化は、まだイメージの段階ですが、少しづつでも具現化へ向けて前進していき、必ず実現したいと考えています。
それでは今日も素敵なゴルフライフを!
コメント