目次
はじめに
ゴルフ場は単にゴルフを楽しむ場所ではなく、多様な人々が交わり、様々な感情や期待が行き交う特別な空間です。お客様との何気ない会話から、時に深刻なクレーム対応まで、毎日が学びの連続です。
この記事では、サービス業の現場、特にゴルフ場での経験を通じて培った「自分も相手も気持ちよくコミュニケーションをとる方法」について、詳しくお伝えします。
ゴルフ場におけるコミュニケーションの多様性
ゴルフ場では、一日に数百人ものお客様が訪れます。それぞれが異なるバックグラウンド、異なる期待、異なる気持ちを抱えて来場されます。私たち従業員は、そんな多様なお客様に対応する必要があります。
主なコミュニケーションの種類としては:
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問い合わせ対応:コース状況や予約についてのシンプルな質問
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相談:ラウンドの組み方やイベント開催に関するアドバイス
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お願い事:特別な手配や配慮の依頼
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クレーム:サービスへの不満や問題報告
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お褒めの言葉:サービスへの感謝や賞賛
このように、一日の業務の中で、私たちは感情の幅広いスペクトルに対応することを求められます。
感情のコントロールと「思いやり」の本質
大人になるにつれ、私たちは自分の本音を外部に出さないように理性を働かせるようになります。好感を持てる相手には自然に笑顔と優しさが表れますが、嫌悪感を抱いてしまう相手には、それを表に出さないようにストッパーがかかります。
これは一見、社会人としての成熟した振る舞いのように見えます。しかし、人間は感情の動物です。どれだけ訓練や経験を積んでも、感情が表情や言動に表れるものです。
重要なのは、この「感情のコントロール」の根底にあるものを見極めることです。
私の経験では、それは「相手への思いやり」であることが多いと気づきました。争い事や面倒を避けるために、不快な表情を表に出さないのではなく、相手の気持ちを慮るからこそ、自然と適切な対応ができるようになるのです。
環境が人に与える影響 – 自分を成長させる環境選び
「自分にとってマイナスになるような人とは無理して付き合う必要はない」という言葉があります。この言葉の真意は、人が周囲の環境から受ける影響の大きさを考えると理解できます。
人は外部からの刺激に対して常に反応し、影響を受け、それが蓄積されていきます。常に優しく穏やかな環境で過ごせば、自然と自分も優しく穏やかな人になっていく。逆に、厳しく騒がしい環境では、自分もそのような特徴を帯びていく可能性があります。
これはゴルフ場のスタッフルームでも実感することです。ポジティブでお客様思いのスタッフが多い職場では、自然と全員の対応品質が向上します。逆に、ネガティブな発言が多い職場では、たとえ最初はやる気に満ちていたスタッフも、次第に不満を抱えるようになってしまいます。
社会人になりたての人に「仕事が早く覚えるコツは、仕事ができる人の完コピをすること」とアドバイスするように、人は自分の憧れる人の真似をすることで成長します。つまり、私たちには「自分がなりたい自分になれる環境」を選択する自由があるのです。
コミュニティにおける影響力の真実
職場などのコミュニティにおいて、最も影響力のある人は役職が上の人や権限のある人ではありません。多くの人と良好なコミュニケーションを取っている人こそが、真の影響力を持つのです。
ここで「良好な」とわざわざ付けたのには理由があります。権力に基づくコミュニケーションには、この「良好さ」が欠けていることが多いからです。部下は上司に思ったことを全て言えず、上司も部下に気を遣うことがあります。
真のコミュニケーションが存在するのは、対等な立場か、慣れ親しんだ間柄の場合が多いでしょう。この「慣れ親しむ」という関係性が、良好なコミュニケーションを可能にする鍵なのです。
サービス業におけるコミュニケーションの難しさ – 第三者の視点
良好なコミュニケーションは、自分と相手の間だけに存在する世界です。しかし、サービス業の現場では、この「2者間の世界」が第三者に与える影響を考慮する必要があります。
ゴルフ場でよく見かける光景として、常連客とスタッフの友達のような会話があります。当人同士には何の問題もない会話でも、他のお客様から見ると、スタッフの接客が雑に映ることがあります。
また、プライベートでも、仲の良い人同士の会話を聞いて、嬉しい気持ちになることもあれば、やきもちを焼くこともあります。
つまり、コミュニケーションを取る際には、直接話している相手だけでなく、周囲で聞いている人々のことも考える必要があるのです。そばに人がいる場合は、その人も会話を聞いていると思いながらコミュニケーションを取ることが大切です。
コミュニケーションの根幹にあるもの – 思いやりの心
私はよく結婚する若い人たちに「お互いに少しの思いやりを永遠に持ち続けて過ごしてください」とアドバイスします。これこそが、すべてのコミュニケーションの根幹にあるものだと感じるからです。
会話の途中で、その内容や相手の表情に対して少しでも「いとおしい」という感情が湧けば、自然と心が穏やかで優しい気持ちになれます。この「いとおしむ気持ち」が、相手への思いやりを生み、良好なコミュニケーションの土台を作るのです。
ゴルフ場での実例を挙げましょう。ある日、ラウンド中に急な雷雨に見舞われ、中断を余儀なくされたお客様がいました。当然ながら不満を抱えるお客様もいらっしゃいましたが、私たちは「せっかくの楽しい時間が台無しになって残念ですよね」という共感の気持ちから対応を始めました。天候というどうしようもない状況ではありましたが、お客様の失望感に寄り添うことで、クレームではなく、理解ある対応へとつながりました。
職場環境と自分自身の調整
「自分にプラスにならない人や環境は避ける」という考え方は、プライベートでは比較的簡単に実践できます。しかし、職場ではそうはいきません。
職場の人間関係に悩む人は少なくありません。最終的には、職場環境を自分にとって良好に調整していくのも自分自身です。しかし、お客様や同僚はそれぞれ違った人間ですから、どうしても合わない人も出てきます。
会社の風土や歴史の中で、自分に合わない環境があるなら、自分自身を調整するのが困難な場合、転職も考慮すべき選択肢でしょう。ただし、これは安易に逃げるという意味ではありません。自分自身の成長の可能性や、環境を変える努力をした上での最終手段として考えるべきです。
ゴルフ場で実践する「思いやりのコミュニケーション」具体例
では、実際のゴルフ場の現場でどのように「思いやりのコミュニケーション」を実践すればよいのでしょうか。具体的な例をいくつか紹介します。
1. クレーム対応における「共感」の技術
お客様からクレームを受けたとき、まずすべきことは「防御」や「説明」ではなく「共感」です。
「ご不便をおかけして申し訳ありません」
「ご期待に沿えず、残念な思いをさせてしまいましたね」
このような共感の言葉から始めることで、お客様の感情は落ち着き、理性的な対話が可能になります。
2. 多忙なときこそ見せる「気配り」
ゴルフ場が混雑しているときこそ、お客様は「自分は大切にされていない」と感じやすいものです。そんなときこそ、
「本日はお待たせして申し訳ありません。ただいま混雑しておりますが、できるだけ早くご対応させていただきます」
というように、状況を共有し、お客様を不安にさせない配慮が必要です。
3. 常連客と新規客のバランス
常連客との親しい関係は大切ですが、それが新規客に「差別」と映らないよう注意が必要です。常連客と会話するときも、周囲にいる他のお客様に気を配り、必要に応じて声をかけるなど、全てのお客様に公平な対応を心がけましょう。
「反面教師」としての学び
「自分にとって良い環境に身を置くことが成長につながる」という話をしましたが、一方で「反面教師」からの学びも重要です。
自分がなりたくない環境で、「これは絶対に嫌だ」と思う人の言動に接する機会が多いなら、その人の言動を自分はしないと意識しながら行動するのも一つの方法です。
しかし、人間は周囲の環境に流されやすいものです。気づかないうちに、自分も同じような言動を取っているケースも少なくありません。そのため、やはり基本は「自分がなりたい人たちが集まる環境に身を置く」ことが最善の方法だと考えます。
ゴルフ場という特殊環境でのコミュニケーション
ゴルフ場は他のサービス業とは少し異なる特徴があります。お客様は長時間滞在し、スタッフと接する機会も多い。また、ゴルフというスポーツの特性上、感情の起伏が激しくなることもあります。
良いショットが打てたときの喜び、ミスショットへの悔しさ―これらの感情が、スタッフへの接し方にも表れます。私たちスタッフは、お客様の感情の波を理解し、それぞれの状況に合わせた対応が求められます。
おわりに~コミュニケーションは技術であり、芸術である~
ゴルフ場でのコミュニケーションは、単なるマニュアル対応では不十分です。お客様一人ひとりの感情を理解し、それぞれに合った対応が必要です。それは技術であると同時に、芸術とも言えるでしょう。
「思いやりのコミュニケーション」を実践することで、お客様はより楽しい時間を過ごせ、私たちスタッフも仕事にやりがいを感じられます。そして何より、そんな環境では、自然とお客様のリピート率も向上し、ゴルフ場全体の雰囲気が良くなるという好循環が生まれます。
最後に、私が常に心がけていることを共有します。
「一呼吸置いて、相手の立場に立って考える」
この簡単なようで難しいことを実践するだけで、コミュニケーションの質は驚くほど向上します。ゴルフ場に限らず、あらゆるサービス業で働く方々の参考になれば幸いです。
皆さんも、自分の環境を見直し、より良いコミュニケーションを築く第一歩を踏み出してみませんか?
それでは今日も素敵なゴルフライフを!
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