ゴルフ場開発者の備忘録 Vol.7 ~「信託」についての考察~

ゴルフ場開発者の備忘録

ここではゴルフ場開発に際して、地権者との交渉の中で新たな気づきや知識として私が得た事について自身の備忘録として記事として整理させていただいています。

今回は「信託」について考えてみました。

きっかけは対象となる用地の不動産登記簿を調べている時でした。

登記簿内の所有者の欄にその土地がどのようにして現在の所有者に名義が変わったのかが記載されており、通常だと「売買」や「贈与」「相続」「遺贈」「財産分与」などがその原因とされているのですが、今回初めて「信託」という言葉がでてきましたので、それについて調べてみました。

 

目次

「信託」とは?

信託とは、

「自分の大切な財産を、信頼する人に託し、自分あるいは大切な人のために管理・運用してもらう制度」

の事だそうです。

特徴としては財産の管理・運用を「誰のために?」「どういう目的で?」ということを自分が決めて、信頼できる人に託すこと(信託すること)ができる事です。

 

「信託」をするメリット

  • 何のために、誰のために、目的を定めて財産の管理・運用を任せる事ができる。
  • 金銭以外にも、さまざまな種類の財産の信託する事ができる。
  • 信託した財産は安全に管理される。
  • 専門家に財産の管理・運用を任せる事ができる。
  • 贈与税等が非課税となるものもある。

 

なるほど、

「信託」の意味とそのメリットは分かりました。

ここまでは見てみると、「託す人」というのは他人で専門家であるイメージですが、今回私が確認した謄本ではおそらくは「親」から「子」への「信託」であるかのように思われましたので、

家族で信託をする場合のケースについて調べてみました。

 

「家族信託をする理由」

家族信託とは「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度。

認知症になると意思能力を喪失したと判断されてしまい、銀行預金を引き下ろせない、自宅を売却できない等のいわゆる「資産凍結」に陥る可能性があります。

この資産凍結を防ぐ対策が家族信託。

 

なるほど、

資産を所有している本人が意思能力を失った場合にこの「信託登記」をしておくと受託者(託された人)が本人に代わって資産を管理・運用できるようになるということですね。

では、

その信託契約中にその受託者が亡くなった場合はどうなるのでしょうか?

 

「家族信託で受託者が死亡した場合」

家族信託では、信託契約の内容で信託の終了事由を定める事が可能です。

信託の終了事由に「受託者の死亡」を定めた場合には、受託者の死亡によって信託契約は終了します。

また、受託者の死亡後に、新受託者が指定されない状況が1年間続くと信託契約は終了してしまいます。

 

やはりそうなりますか。

ここまでで、

委託者が亡くなってしまった場合は一般的な「相続」の手続きに入るのですが、そうでなく生きてはいるものの、意思能力がない場合にはこの「信託」という制度があるという事はわかりました。

ですが、

委託者が亡くなる前に財産の権利を移す「生前贈与」という言葉を聞いたことがあるのですが、それとこの「信託」とはどう違うのでしょうか?

 

 

「家族信託」と「生前贈与」との違い

「生前贈与」はすべての権利をお父さんから息子さんへ移すので、お父さんが無権利者になることに対して、「家族信託」では受益権(家賃や居宅の売却代金)だけお父さんに残して、あとのすべての権利を息子さんに移すことになります。

 

簡単に言い換えると「家族信託」とは「お父さんの財産を使ってお父さんの面倒をみる」という事になるのでしょうか。

「生前贈与」だと「お父さんの財産は譲り受けるもののお父さんの面倒をみる義務はない」という寂しい事になりますね。

実際にはそんな家族は少ないと信じたいですが。

 

では、最後に信託登記に記載されている信託条項の一例を紹介して今回の記事を終わりたいと思います。

 

信託条項の一例

 

一 信託の目的

本信託は、受託者が財産の管理、運用、処分その他の必要な行為をすることによって、受益者の老後の安定した生活及び財産に見合った最善の福祉を確保するとともに、○○家の資産の次世代への円滑な承継を実現する事を目的とする。

 

二 信託財産の管理の方法

  • 受託者は、信託不動産の管理及び運用を行い、居住用不動産として利用する場合には、受益者に対し、これを生活の本拠として使用させ、賃貸用不動産として利用する場合には、第三者に対し、これを賃貸することができる。
  • 受託者は、信託財産の保存、管理及び運用に必要な処置、特に信託不動産の維持、保全、修繕及び改良については、自らが適当と認める方法、時期及び範囲において行うものとする。
  • 受託者は、受益者が信託建物において生活することが困難になったとき、信託建物の老朽化等の理由によりその維持管理が困難になったときその他本信託の目的に照らして相当と認めるときには、受託者の裁量により、信託不動産売却、買換え、交換、解体等の処分をすることができ、また、新たに信託財産となる不動産の購入又は建設をすることができる。
  • 受託者は、本信託の目的に照らして相当と認めるときには、受託者の裁量により、本信託のために第三者から金銭を借り入れ、又は信託不動産を担保に供することができる。
  • 受託者は、信託不動産について、担保権の設定、変更、抹消等の登記、土地の測量、境界の確定作業、地目の変更及び分合筆登記、建物の表題登記及び表示変更登記等の手続きを行う事ができる。

 

三 信託の終了の事由

  • 本信託は、委託者が、受託者の書面による同意を得て、将来に向かってこれを終了させることができる。
  • 本信託は、前項の場合のほか、次の各号のいずれかに該当するときに終了する。
    • 委託者が死亡したとき。
    • 信託財産がなくなったとき。
    • その他法定の終了事由に該当するとき。

 

四 その他の信託の条項

  • 原契約

○○年○○月○○日東京法務局○○作成の第〇〇号「財産管理処分信託契約公正証書」

  • 受益権の内容及び譲渡等

本信託の受益権の内容及び譲渡等は、次のとおりである。

  • 受益者は、信託建物を自己の居住の用に利用することができる。ただし、受託者が、当該信託建物を第三者に賃貸したときは、この限りではない。
  • 受託者は、受益者に対し、その生活費のための金銭を給付するものとする。
  • 受託者は、受益者の医療費、施設利用費、介護サービス費、療養介護費、施設入所費、介護保険料等の費用及び公租公課を直接支払い、又は受益者に対し、それらの費用及び公租公課の支払いのための金銭を給付するものとする。
  • 受託者は、前2号の費用のほか、本信託の目的に適合する費用に充てるために金銭の給付が必要と認めたときは、受託者の裁量により、受益者に金銭を給付することができる。受益者又はその法定代理人から金銭の給付請求があったときも同様とする。
  • 受益者は、受託者の書面による同意が無い限り、受益権について、譲渡、分割又は質入れその他の担保権設定の処分をすることができない。
  • 信託内容の変更

本信託の内容は、委託者と受託者の合意により、これを変更することができるほか、本信託の目的に反しないことが明らかであるときなど、信託法第149条に定める要件を満たす場合に限り、同条に定める手順に従って、これを変更することができる。

  • 後任受託者

原契約第○○条至第〇〇条の事由が生じ当初受託者の任務が終了したとき及び法令に定める受託者の任務を終了する事由が生じた場合の後任受託者については、原契約第○○条記第〇〇項記載のとおりとする。後任受託者が欠けた場合には、受益者は、新たに後任受託者を指定することができる。

  • 残余財産の帰属

本信託が委託者の死亡により終了した場合は、残余の信託財産の帰属先及び帰属割合は、原契約第○○条記載のとおりとする。

 

最後に

いかがでしょうか?

「自らの財産を信頼する人に託す」

そうすることで財産を有効活用する事ができて、自分の生活も豊かにすることができる。

「信託」とはとてもよくできた制度だと改めて感じました。

まさに私が今取り組んでいるゴルフ場開発のための地権者への土地交渉においてもこの思想はあてはまると思います。

最も重要なことは委託者と受託者との『信頼関係構築』だと思わされた今回の気づきでした。

 

それでは今日も素敵なゴルフライフを!

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