有事のゴルフ場対応について

元ゴルフ場支配人の独り言

ここでは、ゴルフ場における有事の際の対応について解説をしています。

台風や大雨、雷、積雪、地震など大自然の中で楽しむスポーツゆえにゴルフ場ではこれらの自然災害が発生した時には被害を避けるための迅速かつ的確な対応が必要となります。

私のこれまでの経験上、有事の際の決断(ジャッジメント)にはいくつものパターンがあり、その時の選択が正しいのか誤っているのか?という事にはずいぶん悩まされる時がありました。

特にゴルフ場のような各部署に分かれて大勢のスタッフが働いている環境では意見も分かれる事になり、選択するにも誰が判断したのかによって対応も変わってきます。

ゴルフ場に限らず今マネジメントをしている方にも読んでいただき参考になれば幸いです。

目次

有事とは

まずここでゴルフ場における有事について定義しておきます。

一般的に有事とは「国家や企業の危機管理において戦争や事変、武力衝突、大規模な自然災害などの非常事態を示す概念。対義語は平時あるいは日常時。」とネットで調べると書いてあります。

ゴルフ場における有事とは「自然災害やその予兆」「コロナなどの世界的な健康被害を及ぼす可能性のある病原菌の流行」「場内で起きた事故や事件」「お客様からのクレーム」、これらの通常では発生する可能性の低い事案、特別な対応が必要な事案、発生により会社に損害を与える可能性のある事案という事に定義したいと思います。

対応する当事者

では、誰が対応するのか?という事ですが、答えは「事業所の全従業員」という事になります。

 もちろん重要な判断は責任ある立場の人が最終的に行うのですが、有事とは突然起きるもので、始まりもいつどこで起きるのか?予測がつきません。

初期段階ではその場にいた従業員が対応し、担当者に引き継ぎ最終的に責任者が対応するケースもあれば、担当者レベルで決着して報告のみで終わるケースもあります。

 要するに全従業員に対応する可能性があり、そのレベルに応じて的確に対応できるように準備をしておく必要があるのです。

対応時の基準

ある程度の役職についている人は様々な研修受講やそれまでの経験から相応な対応は可能ですが、例えば入社したてで社会人一年目の従業員がその場に居合わせたとき、対応に苦労するのはあたりまえの事です。

具体的にどのように対応すればいいのか分からず、途方に暮れるという事もあるでしょう。

 そのような経験も知識も少ない人でも間違いのない対応をするためには対応するときの「基準」≒「優先順位」というものが需要になるかと思います。

私が思う優先順位は以下のとおり

①自らの安全(緊急で最も重要)

②顧客の安全(緊急で2番目に重要)

③顧客の心情(緊急ではないが3番目に重要)

④会社の利益(緊急ではないが4番目に重要)

この順番で考えていければいいかと思います。

これに加えて全ての事に関して制度の高い「仮説」というものが重要になってきます。

この基準をベースに様々なケースでシュミレーションしてみたいと思います。

予測可能な自然災害やその予兆時の対応

台風や大雨、大雪、雷の一部は予兆があり、データ解析による予測も出来るものです。

この場合には事前の準備が大切になります。

 正確な予測に基づいて仮説を立てて、被害が出ないように考えていきます。

「正確な予測に基づく仮説」をしたら、そうなったときの自分の安全を確保、次に顧客の安全を確保、次に顧客の心情を確保、最後に会社の利益を確保していきます。

すべてはこの「正確な予測に基づく仮説」により対応が決まります。

例えば「明日は台風がきて大雨になる予報」が出た場合。

ここで、1.「明日は台風で大雨の中でのプレーはもちろん外に出るのも危険だ」と仮説を立てるのなら、自らの安全も確保するために従業員の出勤はNG、ここまでを考えて残りの顧客の安全、顧客の心情、会社の利益は考慮しないでゴルフ場のクローズと従業員に待機命令を出す。

次に2.「明日は台風で大雨の中でのプレーは危険だ」と仮説を立てるなら、自らの安全は確保できそうなので従業員の出勤はOK、顧客の安全は確保できそうにはないのでお客様の来場はNGとここまで考えたら残りの顧客の心情と会社の利益は考慮しないでゴルフ場はクローズして従業員は主要なメンバーだけを出勤させる。

次に3.「明日は台風がきて大雨になるがプレーには支障はなさそうだ」と仮説を立てるなら、自らの安全は確保できそうなので、従業員の出勤はOK、お客様の来場はOK、お客様の心情を考慮してコースの状況を説明して安全には十分留意することを伝えてプレーOK、会社の利益を重視して、コースの状況説明を省いてプレーを助長するような言動はNG

このような判断になるかと思います。

 すべての行動には根拠が必要で、その根拠がこれらの場合「仮説」になるので、この「仮説」が間違っていた時には被害がでる可能性があります。

上記の場合、3の仮説を立てて現実1の状況になった場合、自らも顧客も会社にも被害が出る可能性も出てきます。

逆に1の仮説を立てて現実3の状況になった場合には顧客の心情と会社の利益の一部のみに被害がでるだけで大事には至りません。

 

 そう考えると最悪なケースを仮説として立てて行動することが長期的な視点でもよろしいのかと思われます。

予測不能な自然災害時の対応

 地震や津波、雷の一部などは予測不能な自然災害であり、出来る限りの準備はしているものの、突然発生するもので、発生直後から迅速な対応をすることが重要になります。

 この場合は仮説ではなく「正確な現状把握」が必要になります。

二次災害の可能性も考慮して、自らの安全、顧客の安全、顧客の心情、会社の利益の優先順位で対応していくようにします。

例えば「震度6強クラスの地震が発生した場合」

 まずは自らの安全と二次災害に合わないように安全な場所に移動して、危険と思われる場所には行かない、近づかない。

この行動は自分だけではなく、顧客も自ら行っているはずなので、それでもなおお客様に危険が及びそうな状況もしくは被害を受けている状況では、自分の安全を担保した範囲で救助に向かう。

二次災害とは誰かを救助しに行った人が被害を受ける事も含まれるという事を覚えておきましょう。

大規模な地震に関してはこれだけだと考えます。

顧客の心情、会社の利益は考慮する余裕なんてなく、みんなが自己防衛のために最善の動きをすることが重要です。

ゴルフ場のクラブハウスはバブルの頃に建設されたものが多く、老朽化が激しいものがおおいです。

強い揺れがおきた事でいろんなところにひずみが生まれ、時間が経ってから倒壊する恐れもあります。

建物内が安全とは限りません。

地震の時は建立物の少ない外に出て待機する方が安全だと考えます。

コロナなどの世界的な健康被害を及ぼす可能性のある病原菌の流行

これは、まだみなさんの記憶に新しい事だと思います。

思い浮かべると、コロナ禍の時に「命が先か、経済が先か」という言葉がよく聞かれました。

当時私もとあるゴルフ場の支配人をしており、なんとか会社の利益の為に通常通りの営業を行っていたところ従業員から「私たちの命はなんとも思っていないのですか?」と辛い言葉を言われた経験がありました。

この時は自然災害とは違い、感染リスクという目には見えない恐怖がみんなにはあり、有名人が感染して亡くなったという訃報や、毎日のように感染者数が発表されては主要都市がロックダウンするのではないかと恐れていた時期でした。

詳しいコロナ禍の時の対応については過去の記事を参考にしてもらうとして、この時にそのような発言をした従業員がしばらく休業から戻ってきたときに「あの時はああいいましたが、仕事がなくなるとそれはそれで辛いものですね」と言っていたことが印象的でした。

 気づいたのは、このような有事の際には、命≒個人の安全経済≒会社の利益との優先順位が人の立場や状況によって変わるという事です。

大事な事は

『個人の意思を尊重しあう事』

ではないでしょうか?

場内で起きた事件や事故

これも自然災害と同じくらいの確率で起こる事案です。

 事件というのは盗難や障害、事故は打球事故やカート事故、横転、夏場の熱中症、プレー中の心臓発作などです。

これも予測は不可能ですが、過去の実績から事前の準備と対応マニュアルなどは出来ています。

また、事件に対しては抑止、事故に対しては防止の策を講じているところもほとんどです。

 発生した時にはすでに自分、顧客、顧客心情、会社のいずれかに被害はでている段階でしょう。

なので、対応としては

なぜそれが起きたかの原因を追究して、二度とおなじことが起きないよう再発防止策を講じる事

が大切になります。

ゴルフ場ではよく「性善説」という言葉を耳にします。

 これは孟子の言葉で「人はみな生まれつき善の性質をもつ」という意味で、ゴルフ場では特に競技中に起きた違反行為のときに使われることがあります。

「彼ももともとは正直な人だが、試合に勝ちたくて虚偽のスコア申告をしてしまった」という例です。

場内での窃盗の疑いやちょっとしたいざこざにより他人に手を上げてけがをさせてしまった人達を仲介人の立場で多く観てきましたが、ゴルフ場では性善説をもってお客様とは対応するように心がけていました、それが顧客心情を傷つけないで済むからです。

一方、場内で起きた事故については原因を究明するなかで、本人の不注意や自己責任の場合がほとんどですが、たまに、自分たちの方に原因がある場合もありました。

 このような時は被害を受けたお客様に対して誠心誠意の謝罪と賠償責任を果たすように努めます。

幸いにも私の経験では重大な事件や事故に遭遇したことはありませんが、今後も注意していきたいと思います。

お客様からのクレーム

では最後にお客様からのクレームの対応についてお話しましょう。

 これは自然災害や事件、事故よりも高い確率で発生すると言えます。

「料金が高い」「ラウンド時間がかかり過ぎる」「昼の休憩時間が長すぎる」などなど、日常で受けるお客様からの指摘も含めると、受け取る従業員にとってはほぼ毎日のようだと思う人もいるかもしれません。

 これが、なぜ有事かというと、これらを小さく受け止めて安易に対応すると会社の信頼を失うくらいの大きな被害に発展する可能性があるからです。

このクレーム対応については自分の安全、顧客の安全よりも顧客の心情と会社の利益に大きく影響してきます。

 対応するケースにおいては「顧客の心情」と「会社の利益」を両天秤にかけるときがあります。

ひとえにクレームといっても数多く考えられますが、その原因として共通していえる事は「お客様の欲望が満たされていない」という事です。

 「お客様の欲望を満たさない」というのはサービス業に限らず、ビジネスとして大きなマイナスポイントになります。

誰しも支払ったお金の対価は手にしないと納得しないものです。

クレームの中には一見してわがままに思える要求もありますが、そこには価値観の違いや感覚の違い、認識の違いなどが起こっている場合があります。

 お客様からすると「自分を理解してもらえない、自分を受け止めてもらえない」という事は大変なストレスになるものです、しかもお金を支払っているのに。

 先ずは、だまって大きなあいづちをしながら、話を聞くことです。

以前アップしたゴルフ場パーフェクトサービスマニュアルにもありますが、お客様とのコミュニケーションの中で絶対にしてはいけない事は「反論しない」事です。

「でも」「しかし」「そうですけど」は禁句です。

この言葉だけで、気の短い人は自分の事を否定されたと感じてしまいます。

 先ほど言いました、「顧客の心情」と「会社の利益」とを両天秤にかける瞬間がこのとき訪れます。

お客様のクレームをしっかりと真摯に受け止めて、対応できるものなら速やかに行えばいいし、そうでない会社の利益を大きく失うような「不当要求」であるのならば、すぐには結論を伝えずに、社内にて検討する旨を伝える、もしくはその場で決断できるような事案なら、毅然として「その要求にはお応えできません」と伝える事です。

 「できないものはできない」とはっきりと伝える事が相手に対しての誠意であるという事も伝えていいかと思います。

さきほど言いました、出来ないことをその場しのぎで出来ますという事で後々大きな問題になり、会社の信頼を失墜させ、利益を大きく失うケースに発展する可能性があるのです。

 また、ピンチはチャンスという言葉通りクレームを言ってきた事がきっかけで、その時の対応が好印象でリピーターになってくれるケースも多くあります。

その時の判断は「この人のいう事は一理ある、このような人にはまた来てほしい」という気持ちがあれば自然に丁寧な対応と気持ちのこもった言動になり、相手にも伝わり仲良くなれるものです。

「あ~この人にはもう二度と来てほしくないな」と思いながらも我慢して大人の対応をしていると思惑に反して気に入ってもらえてリピーターになったケースもありました。

 どんな状況でも、クレームを受ける際にはしっかりと正対してアイコンタクトをとり、誠実に話を聞くという姿勢が最も大切であると考えます。

最後に

いかがでしょうか?

ゴルフ場における有事の際の対応について話してみました。

私が以前、ゴルフ場支配人を務めていての業務の一つに「ジャッジ」というものがありました。

これは、有事の際の事業所の営業についてどうするか?という事や顧客対応、クレーム対応、場内での事件事故への対応、それらすべてに対して決断をしなければいけませんでした。

そしてそれには大きな責任が伴います、そんな責任をプレッシャーと感じたときは少なく、刺激的だと捉えて楽しんでいたと思います。

どんな状況においても、悩んだり選択を迫られ、後になってその結果に対して一喜一憂することも全て日常では味わえないスリルだと捉えて楽しんでいました。

 大切な事は「物事の受け止め方」、まさにパラダイムシフトだと感じています。

とある人生の先輩に言われた一言があります。

 「今日一日を楽しく過ごすのか、そうでないかは、全て自分次第」

と。

この言葉は、毎朝起きたときに自分自身に言い聞かせるようにしています。

 

それでは今日も素敵なゴルフライフを!

 

 

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