目次
はじめに
長年、業界の最前線で見てきた現実と未来予測から、今日は生き残りと収益向上の鍵となる「人的サービス」 に焦点を当てた、実践的マニュアルをお届けします。
ゴルフ場を取り巻く環境は、ゴルファー人口の減少により、「淘汰の時代」 に突入しています。
かつてのように「低単価・高稼働」で売上を追い求めるモデルは限界を迎えつつあります。
需要と供給のバランスが崩れ、供給過多に陥る中で生き残るのは、真の「商品価値」を提供できるゴルフ場だけです。
この「商品価値」の核を成すのが、「ヒューマンスキルによるサービスレベル」 です。なぜなら、コースや施設への投資は重要ですが、それだけでは持続的な差別化は困難だからです。
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施設投資: 見た目の改善は一時的なインパクトに留まりやすく、老朽化の根本解決 にならない「見せかけのリノベ」では客単価向上は望めません。
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コース管理: 資金(70%)だけでなく、キーパーを中心としたコース管理スタッフの情熱とスキル(30%)が不可欠。ゴルファーにとっての最大の価値は「プレーの質」であり、コースコンディションはサービスの印象を大きく左右します。
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人的サービス: 投資の割合は資金20%、人材育成80%。時間はかかりますが、インパクトが最も大きく、進化・継承・無限の可能性を秘めています。これこそが、適正稼働で高単価を実現するための最強の武器なのです。
以下、「もっとゴルフ!流 パーフェクトサービスマニュアル」を、お客様がゴルフ場で体験する4つの重要なシーン「玄関番」「スタート室」「フロント」「レストラン」に分け、具体的な行動指針と共に詳しく解説します。このマニュアルの実践が、お客様に「特別な価値」を感じさせ、リピートと高単価獲得へとつながります。
シーン① 第一印象を決める「玄関番」:名門の風格を演出せよ
玄関番は単なる「荷物運び」ではありません。お客様がゴルフ場に到着して最初に接する「顔」であり、その場の格を決定づける極めて重要なポジションです。
<お迎え時の極意>
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ビッグジェスチャーで誘導: お客様の車を視認したら、片手を斜め高く上げて存在をアピール。車が近づいたら、上げていない手で大きく回転させるような動作でスムーズに所定位置へ誘導。停車後は上げた手を下ろしながら深い会釈を。この一連の「見せる」動作が高級感を醸成します。
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声掛けは「質問形式」で確実に: 「キャディバッグをお降ろしてもよろしいでしょうか?」と必ずお客様の意思を確認。行動の前に声をかけることで「勝手にやられた」というクレームリスクを回避します。
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基本姿勢を徹底:
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男性: かかとを揃え、つま先を拳1個分開く。お尻・背中・後頭部を一直線に。両手は、片方の拳をもう一方の手で包むようにヘソ前で組み、背筋をピンと伸ばす。
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女性: かかと・つま先を揃える。お尻・背中・後頭部を一直線に。両手は親指を引っ掛けるように組みヘソ前に置き、背筋を伸ばす。サイドの髪はまとめ、清潔感ある黒髪が望ましい。
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挨拶の作法:
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「おはようございます」の 『お』 をはっきりと発声してからお辞儀。
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素早く頭を下げ、ゆっくり上げる(清楚な印象)。
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相手と拳2つ分程度の距離を取り、必ず正対して行う。
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お辞儀の頂点で一瞬止まり、アイコンタクトと笑顔を忘れずに(「受け入れ」の意思表示)。
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気持ちを込めた丁寧な対応: 「わかっているだろう」は禁物。初めての方にも丁寧に説明。お客様からの声掛けには、まず前傾姿勢で応じる。混雑時は行動と発声を同時にしてもOK。絶対に「行動→発声」の順番は避ける。
<お見送り時の極意>
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定型文でスムーズに: 「お疲れ様でした」「お持ち帰りですか?引換券はお持ちですか?」「外にお出ししましょうか?」「お気をつけてお帰りくださいませ」などの定型文を3つほど用意。
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言葉と会釈はセットで: 無言の会釈はNG。必ず言葉を添える。
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動作に「間」を作る: 連続した動作ではなく、一動作ごとに一旦「間」を置くことで、テキパキ感と丁寧さを演出。
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すれ違いの挨拶: お客様とすれ違う際は、少し距離を置き、正対して挨拶。挨拶が浅いと2度するはめになる。
シーン② プレー前後の要「スタート室周り」:セルフを特別に変える応対力
スタート室周辺は、プレーの緊張感や終了後の開放感が交錯する場所。お客様の心理状態に寄り添った「応対力」が求められます。
<基本原則>
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気持ちの良い挨拶は最優先。
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「セルフプレーをセルフと思わせない」 サービス精神で。
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お客様の後ろを通る時は必ず 「後ろ失礼します」 の一声を(丁寧さの証明)。
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動作はメリハリを、話す語尾は短く切る(ダラダラ感を排除)。
<積み込み時>
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バッグを積みながらでも、必ずお客様の方を向いて挨拶。「本日もよろしくお願いいたします!」など一言添えると好印象。
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お客様の目的(楽しいプレー)を達成させるための言動を心がける。
<ハーフターン時>
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カート誘導・停止時は玄関番同様の ビッグジェスチャー(片腕を上げて誘導、下ろしながら会釈)。
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外作業は動作・発声ともに大きく。担当スタッフ以外も積極的に挨拶・声掛けをし、チーム全体でアテンドしている姿勢を見せる。
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お客様に「気づいてもらえている」ことを認識させる。会釈は素早く。
<ホールアウト時>
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プレー終了直後のお客様は高揚感MAX。その場の盛り上がりに自ら入り込むような熱意で接する。
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大きな声で、しかし 「せかされている」と思われない 話し方で、「お手すきになりましたらクラブ確認をお願いいたします」と明確に伝える。
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一対一の対応でも、周囲が見ている意識を持つ。
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クラブ確認・清掃・バッグ下ろし・お見送りの全工程で、動作に必ず声掛けを添える(例:「クラブ確認お願いします」「お預かりします」「お車までお持ちします」)。事前に定型文を準備。
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クレーム対応の鉄則:
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まずは相手の言葉を 受け入れる(反論しない)。
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受け入れたことを伝え、その上で 自分の目的・必要な情報を正確に伝える。
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承諾や理解を得られたら、必ず 感謝の言葉 を伝える。
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安全最優先 は全ての現場で共通。
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シーン③ 信頼の窓口「フロント」:優越感を醸成するプロの所作
フロントはお客様と一対一で深くコミュニケーションを取る最初の窓口。「印象・表情・言葉遣い・所作・身だしなみ・挨拶」の質が、その後のゴルフ場全体の評価を左右します。
<基本原則>
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挨拶は早めに: お客様が数メートル手前に来た時点で第一声(気づかれなくてもOK)。
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必ず正対して話す: 横向きや斜めは失礼。
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一流のサービスは一流のスタッフから: ヒューマンスキルこそがお客様に「優越感」を与える唯一の方法。
<チェックイン時>
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「おはようございます、こちらでお伺いいたします」の明るい声で出迎え。
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署名依頼時は 「恐れ入ります」 の一言を添える。
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テキパキとした動作と明瞭な声掛けの融合 が「気持ちよさ」を生む。動作だけ、声だけでは不十分。
<チェックアウト時>
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「ありがとうございました。お気をつけてお帰りくださいませ」の丁寧な見送り。
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カウンター越しの受け渡しは 「大変失礼いたします」 と一言添えて。
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声の大きさに注意(小さすぎると悪印象)。
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ビジネスマナーに則った適切な敬語・言葉遣いを徹底(自己研鑽必須)。
<電話対応>
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声のトーンや言葉遣いで お客様を気遣う姿勢 を伝える。
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内容は必ず 復唱確認。
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朝一番はスタッフ同士で笑顔を作る声掛けをし、良い状態で応対開始。
シーン④ くつろぎと満足の「レストラン」:細やかな気遣いで特別感を演出
プレー後のくつろぎの場であり、お客様と長時間・至近距離で接するレストラン。清潔感と気配りの行き届いたサービスが「最後の印象」を決めます。
<基本原則>
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身だしなみ・清潔感は絶対条件: 爽やかできちんとした着こなし。女性のサイド髪の乱れ、派手なヘアカラーはNG。清潔感ある黒髪が望ましい。
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すれ違い時の挨拶: 一旦止まり、正対して挨拶。
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声は届けてこそ意味がある: 明瞭な発声を。
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所作の美しさ: 手の指は揃えて手のひらを作る。配膳時は体の正面をお客様に向けてお皿を置く。
<接客・サービスの極意>
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席案内: 「空いてる席へどうぞ」より 「あちらの窓側の席が空いておりますので、どうぞ」 と具体的に。特別感を演出。
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席次を意識: ゴルフ場レストランでは 「外観(コース)がよく見える席が上座」。上席者からメニューを渡す。
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会話と傾聴: お客様の言葉に 「かしこまりました」「承知いたしました」 など、理解と受容を示す返答を。安心感を与える。
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謝罪は具体的に: 「申し訳ございません」だけでは不十分。「お待たせして申し訳ございません」「ご迷惑をおかけし申し訳ございません」 と原因を明確に。
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動作のテンポ: 動作を連続させず、短く区切って行うことで「テキパキ感」と丁寧さを両立。
まとめ:顧客心理を理解し、5原則を実践せよ
ゴルフ場を訪れるお客様には共通した深層心理(顧客心理)があります。
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歓迎されるという期待
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自分が一番でありたいという期待
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優越感を得られるという期待
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独占できるという期待
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得をした気分になれる期待
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自分の存在価値が認められるという期待
これらの期待に応えるために、全てのシーンで徹底すべきが 「ゴルフ場接客の5原則」 です。
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挨拶: タイミング、声の大きさ、お辞儀の角度、アイコンタクトを徹底。
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表情: 笑顔と温かな眼差しでお客様を受け入れる。
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言葉遣い: 丁寧で明確な敬語、お客様を主語にした話し方。
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姿勢・所作: 美しい基本姿勢、無駄のない洗練された動作。
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身だしなみ: 清潔感、統一感、プロとしての自覚を示す。
<各セクションの最重要応対ポイント総括>
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フロント: 明るく礼儀正しい出迎え・見送り、丁寧な所作、状況に即した柔軟な対応、プロフェッショナルな電話対応。
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スタート室/キャディ: 明るく元気な挨拶と見送り、メリハリとテキパキ感のある動作、ホールアウト時の気配り、場面に応じた臨機応変な対応(クレーム含む)。
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レストラン: 明るく元気な挨拶・見送り、迅速で正確なサービス、イレギュラー事態への冷静な対応、VIPへの細やかな気遣い。
コースの状態や施設の新旧に多少の課題があっても、卓越した「人的サービス」があれば、お客様は必ずや「また来たい」と心から感じ、満足して帰路についてくださいます。 ヒューマンスキルによるサービスレベルの向上こそが、淘汰時代を勝ち抜き、適正な高単価経営を実現するための、最も重要かつ効果的な投資なのです。
「もっとゴルフ!流 パーフェクトサービスマニュアル」を参考に、明日からのサービス改革に取り組んでみてください。きっと、お客様の笑顔と収益の向上という形で、その成果が現れるはずです。
それでは、皆様のゴルフ場がさらなる発展を遂げられますように。
今日も素敵なゴルフライフを!
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