これまでの自分を立ち返りゴルフ場を運営する事に関して考え直す機会がありました。
ゴルフ場の存在意義とは何か?
それはゴルフ場をとりまくステークホルダー(利害関係者)を幸せにする事ではないかと思います。
その為に大切だと考える事を今回お話したいと思います。
目次
・ゴルフ場の存在意義
先ず、ゴルフ場の存在意義とは何でしょうか?
これまで、既存のゴルフ場の運営に携わってきて、ビジネスとして業績を向上させる為のマーケティングからマネジメントをやってきました。
今回、新規での開発の仕事に携わる事になりまた視野が広がった気がしています。
ゴルフ場開発をするにあたり、対象となる土地の地権者との話を通して感じたことは、
土地の有効活用だけではなく、地域社会への貢献度の高さ
でした。
土地交渉をしていく中で、こんな意見も聞かれました。
所有している土地に関して多くの維持管理費用がかかる、資産である以上、それなりに収益化するように活用しないと負担だけになってしまい仕方がないと。
それを今回のようにゴルフ場用地として賃貸して定期的な賃料を受け取る、もしくは売却してその代金を一括で受け取る事で、これまで二束三文だった土地を収益化する事ができて維持管理する事も必要なくなるという一挙両得の話になってきます。
また、中には個人ではなく法人の方で、過去に土地を投機目的で購入した方もおり、その時の投資金額と今後の利用価値を考慮して契約時の金額について双方が合意するまでに何度も交渉する事が必要あるところもあります。
大多数の方は今の状況と比べると土地をゴルフ場用地として活用した方がいいという考え方になっており、前向きな姿勢はみな共通しています。
そして、今回の予定地には埋め立て地や、工場建設、商業施設など過去に何度も開発の話があったようで、そのたびに開発側の判断で中止になったり、地元住人の反対にあったりして実現に至らなかったという歴史もあります。
今回の私の取り組んでいるゴルフ場開発にかんしては多くの地権者からの賛同もあり、話をしていく中で、事業戦略としてだけではなく、地域社会への貢献、活性化という大きな目的を達成するための取り組みではないだろうかと思う次第です。
そこにゴルフ場ができる事によるメリットはいくつかありますが、その中でも、「景観が良くなる」「地元の雇用を創出する」「土地所有者の利益になる」「地元経済が活性化する」事が大きいと考えます。
おそらく今回の開発に伴い、会員募集はすると予測されますが、一昔前のように会員権を乱発し、ただの資金集めに利用されたり、自然環境に悪影響がでたり、そのような事はないと自信を持って言えるくらいに誠実に事業をすすめています。
ゴルフ場ができると、そこには多くの人たちが集まってきます。
人が多く集まるという事は地域社会にとっての経済活動においてはプラスになると言えますが、
一方で地域住民にとって自分の家の目の前を見知らぬ人達が多く通行する事になるのは決して歓迎する事ではないという現実もあります。
繰り返しになりますが、ゴルフ場の存在意義とはゴルフ場をとりまく全てのステークホルダーが幸せになる事。
その為には、ゴルフ場を作った後にどのように運営してくことが良いのかを真剣に考える事が必要だと思うのです。
・ビジネスとしての在り方
ここで改めてゴルフ場ビジネスとしての在り方について考えてみたいと思います。
ゴルフ場も他のビジネスと同様にシンプルに売り上げと原価があり、その差が利益となるわけですが、ここでは特に売り上げに関して、どのような売り上げの構成がベストなのかを考えてみます。
ゴルフ場の売り上げを構成するのは主に、稼働(来場者数)と価格(客単価)になります。
両者の特徴として言えるのは稼働(来場者数)には限りがあり、価格(客単価)には限りは無いということ。
ゴルフ場の営業時間はナイター施設がない限り基本的には日の出から日の入りまでの、いわゆる日中になります。
当然、一年のうちに季節とエリアによって違いはありますが、私が今関係しているエリアでは一日のうちの日照時間は最も短くて1月の約9時間47分、最も長くて7月の約14時間32分になります。
その間に、9つのホールを2回、昼食休憩をはさんでプレーします。
平均的なプレー時間を2時間10分、昼食休憩時間を50分として、最初にスタートした前半の時間から約3時間後には後半のスタートをして1プレーが終了します。
その間、約5時間10分。
そんな中でどれだけの組数が入れられるかと言うと、スタンダードなプレースタイルでプレーした場合で、9ホールで18組~26組になります。
これが7分間隔でスタートした場合の理論値になります。
ひとつの参考値にはなりますが、ゴルフプレーはみずもの、その日のプレーヤーや状況によってプレー時間に差が出る事もあり、その結果、遅延プレーが発生してコース内で渋滞がおきる場合もよくあります。
コース内で渋滞がおきている時は、プレーヤーはもちろん、従業員も幸せな状況とは言えません。
ゴルフ場のステークホルダーのうち、お客様と従業員の両方が不幸になっている状況とも言えます。
コース内で渋滞ができる理由には様々な事が考えられますが、もっとも人為的なものとしては
『稼働が超過している』
という事でしょう。
ゴルフ場にはそれぞれに最適な稼働があるものと考えています。
コースの距離、広さ、ラフに入った時のボールの見つけやすさ、ホールとホールとの間のインターバルの長さ、ホール順の分かりやすさ、トータルでの難易度、など、思いつくだけ挙げてみましたが、これらの条件の組み合わせがそのゴルフコースのラウンド時間に影響を及ぼします。
平均的なラウンド時間は9ホールで2時間10分となっていますが、一般的なアベレージゴルファーがスコアメイクしながらラウンドした場合に上記した条件で悪いところがあると、平均時間ではどうしてもプレー出来ない事もあります。
そのようなコースの状況に応じて、先程言いました9ホールで18組~26組のお客様を適正にプレーしてもらう事が大切だと思います。
そのあたりを理解せずにどのコースも一概に最大稼働まで入れてプレーさせようとすると、快適どころか事故が起きる可能性も出てきます。
これはサービス業としてもビジネスとしても成り立つものではありません。
稼働が超過している状況はお客様や従業員の満足度が低下している状況であり、仮にその日の売り上げが確保できたとしても、今後に不安がのこる状況であると言えるでしょう。
・運営するにあたり大切な事
ゴルフ場の売り上げを構成するのは主に稼働(来場者数)と価格(客単価)であり、稼働は限界があり、ゴルフコースの状況に応じて適正な稼働があるというのが私の考えです。
そして、
この稼働と価格は一般的には反比例の関係にあります。
売り上げを最大化させる為にはこの反比例する二つを上手く組み合わせる必要があります。
具体的に最大売り上げを実現させるためのやり方は以下の二つ。
「最大稼働の適正価格」と「適正稼働の最大価格」の二つです。
開発業務に携わる前のこれまでは私は前者の思想をゴルフ場運営の信条としていました。
しかし、今は後者の
「適正稼働の最大価格」こそがゴルフ場の存在意義を示すための売り上げ最大化実現のベストな方法
だと認識しています。
ここでいう適正な稼働とは、先程の日照時間や平均ラウンド時間から算出された理論的な数値ではなく、もっと定性的で、
お客様が快適にプレーしたと思えて、従業員がパフォーマンス高く仕事ができたと思える稼働であると考えています。
そして、稼働と価格のうちどれが先で、どれが大切かと言うと、稼働が先で大切だと考えています。
これからのゴルフ場運営で大切な事は
『先ずは適正稼働を維持(堅持)する事』
であり、これを基礎として、売り上げの最大化を図るべく私たちは日々創意工夫をこらしていく事がゴルフ場の存在意義を高める事にも繋がると考えています。
『適正稼働を維持(堅持)する事』はお客様、従業員、地権者を幸せにする事に繋がり、『最大価格』を追求する事で売り上げを最大化させると、企業、株主、地域社会、行政を幸せにする事に繋がると考えています。
これからのゴルフ業界は淘汰の時代に入ると予測しています。
プレーヤーが少なくなっていく時代に稼働を追い求めていくと直ぐに限界に到達するでしょう。
少なくても質の高いものが価値あるものとしてユーザーには受け入れられる事でしょうし、質の高いものには高い価格がつく。
そのようなゴルフ場運営をめざしてこれからも一歩一歩確実にすすんでいきたいと考えています。
それでは今日も素敵なゴルフライフを!
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